いつもベンチ前で、チームメートを迎える姿があった。ヤクルトのブルペンを支え続けた、プロ19年目の近藤一樹投手(37)。球団は2日、来季の契約を結ばない旨を通告したと発表した。
マウンドを降りると、ベンチ前でくるりとグラウンドを向く。必ず、野手と目を合わせながら、グラブタッチやハイタッチをかわす。その時の選手たちの柔らかな、晴れやかな表情。それは、輪の中心に近藤がいたからだったはずだ。
近鉄、オリックスでは先発投手。ヤクルトに移籍後、中継ぎへと役割が変わった。「リリーフになって、1アウトの大切さをすごく感じたんです。打球を取ってくれる人がいなければ、投手は1アウトも取れないですから」。いつの間にか、ベンチ前で野手を出迎える“感謝のルーティン”になっていた。
それはある時からふと始まり、今では当たり前の光景となった。「無意識に、ルーティンになっていました」と振り返る。
投手が投げられるのは、守備についてくれる野手がいるから。たとえ3球三振を奪っても、3者連続三振にしても、打球が飛ばなくても、感謝の気持ちは変わらない。「後ろにいる安心感を作ってくれた野手に向けて、この時間をありがとう、すみませんという気持ちです」と話していた。
リードを守るため、チームの勝利のために戦う。全員で戦って、チームメートが待つベンチに帰る。それは「みんなで一緒に帰る感覚」。だから、みんながいい表情になっていたんだな、と思う。「打たれた時にできないのが、ネックなんですよ」という言葉が、近藤らしい。
きっとファンの人にとっても、近藤が投げた後に見るルーティンになっていたはず。ヤクルトの選手にとっても、ルーティンになっていたはずだ。ベンチ前で野手を待つあの姿を、もう1度見たいと願う。【保坂恭子】




