運命は「口ぐせ」で決まる。大学時代、学校の図書館で、ふと手にした本にそう書いていた。「人は誰でも口ぐせ通りの人生を歩む」。そんなのウソだ。誰が信じるんだ? 当時はそう思っていたが、考え方が変わった。

矢野監督は今季、常日頃から「俺たちは優勝すると決めている」と言ってきた。最終的に2位に終わったが、その前向きな思考は選手たちにも浸透している。今月6日、新人選手たちが甲子園や鳴尾浜の施設を見学した。ドラフト1位の佐藤輝以外の新人は、指揮官と初対面。矢野監督の印象を聞くと、皆が口をそろえて教えてくれた。

「言葉を大事にされている方でした」

ドラフト4位の立命大・栄枝は、指揮官の訓示を詳しく明かしてくれた。

「『ビッグマウスでいいから大きな数字を口に出して言え』と言われました。例えば、打率3割でもいいけど、もう1つ上げて3割5分とか。3割を目指してたら3割5分は無理やからと。少し厳しいことを言って3割でもいい。自分にプレッシャーかかるから、そういうので頑張れる。そういう話をいただきました」

1年前の入団会見。19年ドラフト1位の西純は「沢村賞」、同2位の井上は「60発」と宣言した。2人に「去年なんて言ったか覚えてる?」と聞くと鮮明に覚えていた。

井上 「30本打ちます」って言って(矢野監督に)「そんなん言わずに40本、50本、60本」って言われました。それで「60本」って言い換えました。覚えてますよ。

西純 僕は(高校時代に)負けないようにガッツポーズしていきたいと思いますみたいな感じで言ったと思います。

口ぐせがすべてかなうわけではないが、口に出さないと始まることはない。指揮官はそう言いたいのだと感じた。その言葉を、何年たっても本人は覚えていて、その目標に向かって突き進む。ルーキーたちをはじめ、選手たちが大きな目標を口にしても、温かく見守ってほしい。【阪神担当=只松憲】

19年12月2日、矢野監督を中心に記念写真でポーズをとる前列左から遠藤、及川、2列目左から井上、西、後方左から奥山、小川、藤田、小野寺
19年12月2日、矢野監督を中心に記念写真でポーズをとる前列左から遠藤、及川、2列目左から井上、西、後方左から奥山、小川、藤田、小野寺