執念のヘッドスライディングだった。オリックス小田裕也外野手(31)が、1日のソフトバンク戦(京セラドーム)の8回に代走で途中出場し、今季初盗塁を決めた。

緊迫ムードの中、赤い手袋が送球よりも、先にベースタッチした。1点リードの8回無死、3番吉田正の右安打を見届けると、すぐに一塁側ベンチを飛び出した。「ピンチランナー、小田裕也」がコールされると、三塁ベースコーチのサインを黙視し、すうっとヘルメットに手をやった。

マウンドには救援左腕の嘉弥真。左、右、左、と足を進めてリードを取ると、何度か目が合った。2球連続でけん制。1点を争う展開だけに警戒されるが、1死後、勝負の瞬間は来た。ジョーンズの2球目に、果敢にスタート。思い切って頭から滑り込むと、二塁ベースに左手が先着した。今季初盗塁。ここ一番の場面で仕事を果たし、伏見の適時打を呼び込んだ。

球界を代表するイケメン選手は、華やかに見せ、グラウンドでは泥臭い。常々、「足で取れる1点は大きい。自分の見せ場ですね。常に1つ先の塁を狙う。そこも持ち味」と話すように、目前の1点をもぎ取る。試合序盤はベンチで戦況を観察するが「いつでも準備はできています」というように、試合後、爽やかイケメンのユニホームは、いつも汚れている。

生きるために、技を磨く。開幕直前の3月23日。背番号50は、1軍本隊を離れて大阪・舞洲にいた。龍谷大との練習試合に「特別出場」。打席には立たず、代走のみの出場で、1、2、3回と、臨時代走で出場した。

さらには、オープン戦も含めて、今季1軍での打席は、いまだにない。試合終盤の代走、守備固めでの起用が主だが、存在感はピカイチ。勝利後のハイタッチには、常に小田がいる。「自分は自分のできることをやっていくだけ。チームが勝つにはどうするかを考えて」。

愛用するグラブの内側には、座右の銘ではなく、球団ロゴマークを刻んでいる。「チームが勝つということが大前提。自分もそこで活躍したい。打って、走って、守って。準備をしていくだけです」。スペシャリストに生きるのも、悪くない。【オリックス担当=真柴健】