原石が磨かれ、輝き出した。オリックス高卒2年目の宮城大弥(ひろや)投手(19)は、1軍で投げる度に成長している。

今季ここまで8試合に先発して5勝0敗、防御率はリーグトップの2・32。「負けるまで髪を切らない」というゲン担ぎでモチベーションを保ち、19歳と思えない落ち着いた投球スタイルと圧倒的な成績で、新人王争いに参戦中だ。

1年目だった昨年11月6日の日本ハム戦(京セラドーム大阪)でプロ初勝利を「01年生まれ1号」で飾った。高校時代に「BIG4」と呼ばれて注目された同学年のロッテ佐々木朗、ヤクルト奥川、阪神西純、及川より先に白星を挙げた。それでも「同級生を引っ張っていく存在が彼らだと思う。僕は今も追う存在」と謙虚だった。ドラフト1位入団にも「ドラフトの順位にとらわれないように。外れ外れ1位なので、3位ぐらいの感覚。そこで『自分は1位だ』と思うとプレッシャーになるじゃないですか」と冷静に分析。浮足立たず、おごらず、平常心を心掛ける姿は今も続いている。

昨オフに「フィニッシュボール(決め球)の精度を高めたい。新しい変化球を覚えられたら投球の幅も広がる」と目標を掲げ、新たにフォークやカットボールなどの習得に乗り出した。代名詞となる決め球を求めてみたが、「どのボールでも勝負できるように」と考えを改めた。現在は150キロを超える直球に加え、2種類の球速差をつける「ダブルカーブ」、鋭いスライダー、パームのような握りで投じるチェンジアップ…。これだけでも球種は豊富で、打者は狙いを絞りにくくなった。

それでも宮城にはまだ武器がある。打者の左右によって、プレートを踏む軸足の位置を変更し、1球ごとに投球リズムも変える。右足を上げるタイミングも細かく変更し、クイック投法にも着手。腕の高さも場面によって変える。リリース位置が決まってないから、オーバースローでも、スリークオータでもない。1球ずつ、ボールの出どころが違うのだから、打者が惑わされる理由も分かる。

「プロの世界で感じたことは、投げる前から『野球が始まっている』こと」

入団当時にはプロのシーズンについて「年間180試合ですか?」とこちらがびっくりする発言をしていた。同じ人物と思えないような成長ぶりだ。

憧れの投手は本の中。漫画「ダイヤのA」に登場する“精密機械”こと揚舜臣投手に羨望(せんぼう)のまなざしを送る。「3球、外。3球、内…。現実では一流の選手でも投げミスはある。でも、漫画だとほとんどない」。追う背中は2次元の世界にいる。

01年世代には期待しかない。佐々木朗が甲子園でプロ初勝利、奥川は今季2勝。阪神勢では西純がプロ1勝をマークし、及川も1軍マウンドを経験。そして、5勝無敗のオリックス宮城。大弥(ひろや)の名前をあえて音読みして「ダイヤ世代」と呼びたい。みんな、輝く日のために奮闘する。【オリックス担当=真柴健】