何から何まで異色の選手がDeNAに育成ドラフト3位で指名された。

BC・茨城の大橋武尊外野手(20)は、東京のど真ん中にある銀座中学時代、どの野球チームにも所属していなかった。中学に野球部はなく、硬式のシニアやボーイズ、軟式チームにも入らなかった。「自分でやっていたみたいな感じ」「個人でマンツーマンで教えてくれるところでやっていた」。江東区のバッティングセンターに通い、打撃の個人指導は受けていた。だが、中学3年間で1度も試合を経験していない。こんなプロ野球選手は、かつていただろうか。

小学校時代は違う。1年生から、月島ライオンズという少年野球チームに所属していた。横浜スタジアムや神宮球場に通う、野球ファンでもあった。大多数の選手とそれほど変わりはないように思える。だが、中学以降の進路では、新たな道を模索した。「僕の中学での目標は、甲子園に出ることではなくプロで活躍することだった。成長にベクトルを置いた時に、アメリカの経験をしておく、英語を学ぶことが未来に大きくつながると思った」。日本の高校に進まず、米国にあるIMGアカデミーというスポーツ専門学校に進んだ。

同校の案内によると、1年間の学費や食費は1年間で7万7900ドル(約856万9000円)だ。「父と母は自分の意見を尊重してくれて。理由が説明できるまでは許してくれなかったけど、ちゃんと『こうしたいからこうしたい』と説明したら許してくれました」。父渡さんは会社経営、母はキャビンアテンダント(CA)だという。3通の推薦状、中学時代の成績、面接、英語で半年をかけて書いた約3000字のエッセーを通して、入学が許可された。ちなみに、当時の英語力は「I am go」など「動詞と動詞をつなげていた」というレベルで、持ち物一覧のタオル(towel)も読めなかった。

同校の野球部門は、各チーム25~30人前後で、10チームもあるという。上原浩治氏(日刊スポーツ評論家)の長男、一真さんも在籍している。その縁もあり、上原氏から現地で助言をもらったこともあった。茨城入りが決まった際には「これから厳しい道を自分で選ぶかもしれないけど、常に上を目指して頑張って」と激励され、DeNAからドラフト指名されると「おめでとう」とテキストメッセージを受け取ったという。

IMGでは、走力を50メートル6秒3から5秒8に縮め、10チーム中の最上位チームにまで上り詰めたという。チームメートには、MLBのダイヤモンドバックスから1巡目指名されたブレナン・マローン投手や、ブルージェイズに2巡目指名されたケンドール・ウィリアムズ投手らがいた。同校から日本のプロ野球でドラフト指名された選手は初めて。「アメリカの高校から茨城でやってNPBで指名受けたので、新しい道を切り開く第一人者になりたい」。まずは俊足で支配下登録を勝ち取る。

【DeNA担当 斎藤直樹】