熱が込められた17球だった。オリックス山岡泰輔投手(26)は、11月25日の日本シリーズ第5戦(東京ドーム)で電撃的にマウンドに復帰した。

3点リードの8回。4番手ヒギンスがヤクルト山田に3ランを浴びた。同点の8回1死で背番号19が5番手としてアナウンスされた。

「自分の中では、もう痛くなかった。投げられる状態だった。あとは首脳陣の判断。どの場面でも投げられる準備をしようと思っていました」

投手・山岡がコールされると東京ドームにどよめきが起きた。それもそのはず…。山岡は6月22日の日本ハム戦(京セラドーム大阪)の初回に打者5人に投げたところで右肘の違和感で降板。翌23日に出場選手登録を抹消された。8月中旬に2軍戦で実戦復帰したが、連投テスト後に再び遠ざかった。9月17日に岡山県内の病院で右肘クリーニング手術を受け、10月上旬には「日本シリーズまでチームが行ってくれれば、間に合うかもしれない」とポツリと漏らしていた。

懸命なリハビリを経て、公式戦での登板がないまま大舞台にぶっつけ本番で復帰。「楽しかったですね、マウンド。良い場面で投げさせてもらえたなと思います」。負ければ敗退の第5戦、8回途中でマウンドに上がり無失点。9回に代打ジョーンズが勝ち越しアーチを描き「神戸に帰ろう」の合言葉を実現させた。

勝ち投手は、窮地を救った山岡だった。「最初は(完治まで)3、4カ月と言われたから…。焦らずに来年に向けて調整していたんですけど…。キャッチボールしたときに(日本シリーズで)投げられるんじゃないかと」。明るい光が見えると同時に突っ走った。

周囲からは心配の声が上がった。それでも「投げられなかったら、ブルペン(メンバー)に入ってない。40人に入った時点でね。もし日本シリーズ期間も投げられない状態だったら、断っていたと思う」と冷静な判断で、ブルペン入りしていた。

「あの試合に投げたか、投げてなかったかでは来年が変わってくると思う。だから、良かった。来年はフルで戦いたいですね」

同期入団の山本が沢村賞、日頃からかわいがる高卒2年目の宮城が新人王に輝いた。「もちろん、刺激ですよ」。19、20年の開幕投手が、静かに闘志を燃やしている。【オリックス担当=真柴健】

ヤクルト対オリックス 8回裏ヤクルトの後続を抑えガッツポーズする山岡(2021年11月25日撮影)
ヤクルト対オリックス 8回裏ヤクルトの後続を抑えガッツポーズする山岡(2021年11月25日撮影)