「最悪ですね」

西武山川穂高内野手(30)の返答が意義深かった。16号2ランで勝利に貢献した28日DeNA戦後。本塁打を放った13試合はチームが全勝という「不敗神話」について、聞いた時のこと。冒頭の言葉が、熱気を帯びて返ってきた。

そこには確固とした理由、譲れぬ信念がある。

「ホームランを打った試合は勝たないといけない。逆にすると、ホームランを打たなかったら負けるのかという感じになってしまう。負けている試合でも本塁打を僕は打ちたい」

もちろん、これだけではない。

今、山川は過程、準備に心を砕き、グラウンドに立つ。試合前にはノートに「今日できること」も書き留める。練習、ネクストバッターズボックス、打席中など細部にこだわったルーティンを重ねる。体と頭の準備を完璧にすることに集中。少し強引に言えば、結果は考えていない。凡退だった後も笑顔の姿が多いのは、後悔なき過程、準備の産物。「ベストを尽くしたなら仕方ない」と割り切れているからだ。

ただ「不敗神話」というのは、チームの「結果」に由来した言葉である。大切にしている「過程」ではない。

「ホームランを打った試合は負けていないのは結果なので。結果に左右されない。結果より過程が大事というのが僕の意見」。

そして「普通」であることも心がけている。「できるだけ外的要素を入れたくない。毎日、同じことをしたい」。1発を打ったか、否か-。その結果を気に掛けることは「普通」を惑わす外的要素にもなりかねない。

取材部屋からの去り際。一通り「最悪」という言葉の意図を説明し、振り向きながら笑った。「だから最悪って書いておいてください」。そして最後に付け足した。「僕がホームランを打てなくても勝ちますよ。ライオンズは」。その自信に満ちた言葉が、何とも頼もしかった。【西武担当=上田悠太】