また1人、道産子選手が頭角を現した。5月29日の巨人戦。白老町出身の根本悠楓(はるか)投手(19)が、5回5安打2失点でプロ初勝利を挙げた。巨人戦でプロ初勝利を挙げたのは、パ・リーグ投手では初めての快挙だった。勝利した瞬間、真っ先に頭をよぎった人物がいた。「じいちゃんも野球好きなので(初勝利は)うれしい」と、ほおを緩ませた。

「じいちゃん」こと勉さんは、北海道南西部・白老町でスケトウダラの漁師だった。全盛期の握力は90キロ以上。冬場に漁に出る姿を、根本は物心ついたときから「かっこいいなあ」と尊敬のまなざしを送っていた。一緒に風呂に入りながら、野球談議に花を咲かせたことが思い出の1つ。野球を始めた小学1年から高校3年まで、ほとんどの試合に駆けつけて熱心に応援してくれた。

白老白翔中3年時には、夏の全国大会決勝で完全試合を達成。U15日本代表でアジア選手権Vに貢献し、高校進学時には道内だけでなく、本州の強豪校からの誘いを受けた。悩んだ末、苫小牧中央に決めた。「あんまり遠くに行かせたくない、と言っていた」。離れて暮らすことを心配した祖父母の近くで、野球を続けることにした。

勉さんは現在、左半身まひで両手でつえをついて歩いている。プロ初勝利はテレビ画面を通して見届け、札幌ドームに足を運ぶことは出来なかった。来春には新球場「エスコンフィールド北海道」が完成する。「急な階段とかがなければ、じいちゃんも見に来やすい。その時に見に来てもらえたら」。じいちゃんの声援を受け、躍動する姿が待ち遠しい。【日本ハム担当=田中彩友美】