再び1軍で投げる日が待ち遠しい。ソフトバンクの高卒2年目右腕、田上奏大投手(19)が息を吹き返してきた。16日のウエスタン・リーグ、中日戦(タマスタ筑後)で7回無失点。キャリア最多の101球を投げ切った。「真っすぐの強さが以前のように戻っていた。しっかり押せていけたので早めに追い込めていいピッチングができたなと」。

今までは経験したことのない疲れが田上を襲っていた。4月に育成から支配下登録。同12日のロッテ戦でプロ初登板初先発。白星はつかなかったが、6回途中無失点、最速155キロの衝撃デビューを飾った。頭の追いつかない目まぐるしい“出世”。何度も「夢みたい」と話した。同23日の日本ハム戦にも先発し、2回途中2失点で降板した。

あれから約2カ月。田上は「1軍のピッチャーはすごすぎます」と汗をぬぐった。1軍独特の緊張感、調整法、ホテル待機。勝敗が全てのペナントレースに参加し、全身筋肉痛に襲われた。まだ19歳。無理もないが、2軍再調整の後は5戦3敗。フォークは浮き、最速も150キロにも満たなかった。小久保2軍監督も「感じたことのない緊張と疲労で、抜けるのに1カ月ちょっとかかった。そのぐらい全身筋肉痛で疲労困憊(こんぱい)で帰ってきていた」と振り返った。

軸足の右足を見つめ直し、再び球威を取り戻した。疲労も取れた。今はペース配分も意識しない。「それをしてたらレベルアップできない。今は1イニング1イニング」。

田上の誕生日は11月。10代で1勝を刻めば、12年の武田翔太(当時19)以来10年ぶりになる。常勝軍団を築いたソフトバンクにとっては、久しぶりに期待の10代投手が現れた。今季再びチャンスがあれば、夢を見たい。【ソフトバンク担当=只松憲】