日本ハム新庄剛志監督(50)にとって、プロ人生をスタートした甲子園への凱旋(がいせん)は、やはり特別だったようだ。

6月3~5日に行われた阪神3連戦。敵地にもかかわらず、球場全体の空気は初日から不思議な高揚感に包まれていた。かつて「虎のプリンス」と呼ばれたBIGBOSSは、改修後、初めて立った甲子園のグラウンドで「たまに左中間のライトが目に入って、顔面に(ボールが)当たったこと、あるんですよね。高速道路を走っていたら(見える)あの照明が、甲子園という感じだった」と、若かりし日を懐かしんだ。

3日間で集めた観客は、計12万7754人と連日の超満員。コロナ下で抑圧されていた野球ファンの鬱憤(うっぷん)が爆発したかのような盛り上がりで、そんな阪神ファンの熱気に応えるように、BIGBOSSのファンサービスも満載だった。練習中から客席へ手を振り、メンバー表の交換後は、バックスタンドを背にスマートフォンで自撮りを敢行。練習中のインスタライブも、阪神側の全面協力があってこそ。日本ハムの練習中に、日本ハム本拠地の札幌ドームで使用している「きつねダンス」の原曲が流れたのは、阪神側の粋な計らいだった。

阪神時代はマスコミ嫌いだった。性格も「暗かった」。活躍をした先輩より、大きく報道されることに引け目を感じ、口を閉ざすようになった。「もともとは明るかったんだけど。タイガースの選手はそうなる、みんな。ファンの圧もすごいし、それで鍛えられた。ある意味、感謝」。激しいヤジには「球場に来るファンは、お金を払っている分、ストレス発散していい。オレたちがどうこう思う必要はない」と、ある時期から割り切った。

熱狂の3日間は、1度も勝てずに終わった。でも、長い年月を経て帰還した甲子園の空気は、温かかった。「この大歓声の中で、ずっとやっていたんだなって。ジーンとくるものがありました」。感謝の気持ちで、甲子園を後にした。【日本ハム担当=中島宙恵】