阪神は今季も守りのミスが目立った。140試合消化して84失策と、このままでは5年連続でセ・リーグワーストとなりそうだ。

7月20日広島戦(マツダスタジアム)の試合終盤に右翼手佐藤輝が安打のゴロをつかみ損ねる適時失策、さらに中堅手近本も打ち取った飛球を落球と外野手が失策を重ねた。試合後、矢野燿大監督(53)は論ずるに値せずと言わんばかりに「本人に聞いてくれよ!」と厳しいコメントをしたことがあった。

現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、阪神だけでなく試合後は代表取材が主なため、敗戦時にミスをした選手に話を聞くことはほぼできない。コロナ以前なら、あの失策はどうして起きたのかをぶら下がって聞いていた。もちろん答えたくない、悔しさで言葉を発することのない選手の姿もたくさん見てきた。言葉はなくても、その表情を見ることも取材だった。「照明が目に入ったから」「ボールを握り損ねたから」「目の前でイレギュラーした」など、話してくれる選手もいた。

18日ヤクルト戦(甲子園)は今季最多タイの1試合3失策し0-1で敗れた。遊撃手中野は2つの送球ミス。翌日19日の練習で藤本、久慈両内野守備コーチから熱心に指導を受けていた。代表取材で中野は「ちょっとステップが浅かったというか合っていなかったとコーチに言われた。映像を見れば自分でもどこが悪かったか分かる。何が悪かったかを分かったうえで練習していければ」と答えてくれた。翌日でもステップがうまくいかず悪送球となったことを知ることができた。

失策の中には積極的に攻めた失策もある。リーグワーストの数字ばかり追いかけず「なぜ?」を知りたい。正直、嫌なことを聞くのはこちらも気持ちがいいものではない。それでも聞くことが仕事と思い直したい。もちろん、選手へのリスペクトを持って、言葉も選びたい。

プロ野球では約半分の試合で敗戦を取材する。失策だけでなく打たれた投手にも質問していた。コロナが収まり試合後のミックスゾーンが再開された時、その1歩を出せる勇気を忘れないようにしておきたい。【阪神担当=石橋隆雄】

守備練習する阪神高寺望夢(撮影・上山淳一)
守備練習する阪神高寺望夢(撮影・上山淳一)