世界一まで上ったからこそ、足元のぐらつきが気になった。3月のWBCで優勝した侍ジャパンが紫綬褒章を受章した。代表して15日の伝達式に出席した栗山英樹監督(62)は、1日仕事を終えると「今回のWBCに関してはすごく意味があったと思う」と口を開いた。

それは「野球の未来にとって」という意味だ。「俺だけじゃなく、選手も野球のあり方に危機感を持っている。メジャーリーガー含めて本当に一生懸命やってくれた。本当に何か一石は投じられた」と、侍ジャパンが一丸で戦ったことに満足感をにじませつつ、こう続けた。「ただ、この一石が、波紋がちゃんと岸まで届くようにやるのは結構、難しいなあとは思っている」。

帰国後、野球が置かれた状況を目の当たりにしたという。公園でキャッチボールができない。中学校の野球部の数が激減している。「具体的に自分ができることがあるかもと思っていたけど、ちゃんと考えなきゃダメ」と痛感したことを明かした。

声出し応援が復活し、オリックス山下舜平大投手のような新顔も活躍を始めた。WBCの熱が、うまくシーズンにつながっているようにみえる。少年野球の見学希望者が増えたという話も聞く。そういう話に触れると、プロ野球の未来は明るいと単純に思ってしまう。だが、栗山監督は逆で、危機感を隠さなかった。

そもそも、少子化が進む現実がある。競技団体が何も動かなければ、そのスポーツをやる子どもたちの数は減っていくばかりだろう。栗山監督は「卓球だったり、サッカーだったり、バスケットだったり。それがダメなんじゃなくて、うまく盛んになりながら、野球も一緒に盛んになっていかないと」と話した。なぜなら「高校野球のあの環境だけは残していかないと、いい選手が生まれてこない。(野球をする子どもの)数が減れば減るほど、世界で通用する選手が減るのは事実」だからだ。

集まった記者に最後、こう話した。

「みんなの中でそのことを頭に入れてもらって、少しでもその(野球の)良さを伝えてもらうとありがたい」

野球記者も大事な宿題を課された。【侍ジャパン担当=古川真弥】