阪神の大竹耕太郎投手(27)は、なんとも意外な足跡を球史に刻んだ。4月8日のヤクルト戦(甲子園)。先発し6回無失点で、移籍後初登板を白星で飾った。大竹は学生野球界の雄、早稲田大野球部出身だ。1936年(昭11)に発足した阪神タイガースの1軍公式戦に登板した早大出身投手は、大竹が初である。

移籍早々エース級の活躍を続ける左腕は、早大時代に東京6大学リーグで通算11勝をマーク。17年の育成ドラフト4位指名を受け、ソフトバンク入りした。18年シーズン中に支配下へ昇格し、19年には5勝と成長を遂げる。22年に初めて行われた現役ドラフトで、猛虎の一員となった。

阪神と早大の縁は深い。現監督の岡田彰布は同校野球部の主将を務め、79年ドラフト1位で6球団の競合を経て阪神に入団。85年日本一の際には、不動の5番打者として日本一メンバーとなった。03年ドラフト自由枠では、鳥谷敬が逆指名を経てタテジマに袖を通した。在籍中の出場2169試合、通算2085安打はいずれも阪神最多である。

近年ではほかに、堅実プレーで内野を引き締めた上本博紀もいる。また、90年から95年途中まで監督を務めた中村勝広も、早大ОBである。

投手に関しても、阪神が獲得を目指した選手はいた。近年では02年オフに和田毅をリストアップしたが、和田はダイエー(現ソフトバンク)を逆指名。10年ドラフトでは大石達也(西武に入団)を、14年には有原航平(日本ハムに入団)をそれぞれ1位で入札したものの、抽選で外していた。

大竹は昨季ソフトバンクで1軍登板2試合と、出番を減らしてはいた。とはいえ、現役ドラフトの導入がなければ、獲得できていたかどうか。ここまで7試合で6勝0敗、防御率0・40。破竹の快進撃を続けている新参左腕は、意外な形で意外な歴史をつくった。縁は異なもの、味なもの。大先輩でもある岡田監督の「アレ」という、歴史の1ページにもその名を残してほしい。

【記録室 高野勲】(22年3月のテレビ東京系「なんでもクイズスタジアム プロ野球王決定戦」準優勝)