巨人大勢投手(23)が眠い目をこすりながら父八寿男さんの車に乗り込んだ。5月26日の午後9時、ナイターで行われた阪神戦が終了。

宿舎へ帰路につくナインとは異なり、約30キロ離れた大坂・羽曳野の光線療法&トレーニングジム「Rebirth」に向かっていた。午後11時から午前2時すぎまで、関西国際大時代から面倒を見てもらってきたパーソナルトレーナーの萩原淳由氏によるコンディショニングと治療に費やした。宿舎に帰ったのは午前3時。翌日30日は午後2時開始のデーゲームで、7時間後の午前10時には甲子園に到着するハードな日程をこなした。

ここまでやるには理由がある。もちろん時間的にもスケジュール的にもキツい。それでも、もっとキツいことがある。「打たれるキツさ、負けるキツさに比べたら、このキツさは全然大丈夫です。これでチームが勝てるなら、やれることは何でもやりたい」。球団に頼み込んで、許可をもらってコンディショニングに努めた。

2年目でプロの怖さと難しさを体感する。昨季は新人歴代最多タイの37セーブを記録し、新人王を獲得。WBCの侍ジャパンにも選出され、決勝と準決勝を含むチーム最多の4試合に登板して世界一に貢献した。グラウンド外でも、ヌートバーのペッパーミルパフォーマンスに対抗した「#大勢は塩」など、ユーモアあふれる人柄で知名度も人気もアップした。

しかし、巨人に戻ってからは甘くない現実の壁にぶつかった。5月12日と13日の広島戦(東京ドーム)でプロ入り後初めて2試合連続でセーブに失敗した。昨季は1試合しかなかったセーブ失敗。左打者を並べられ、足を絡められた。さすがのメンタルモンスターも少し落ち込んだ。でも、下を向いている暇はないとすぐに前を向いた。「さらに良くなるための新たな壁だと思う。少しどんよりしたけど、自分を信じて投げようと。これを乗り越えてさらにいい投手になれるように頑張ります」。成長のきっかけをもらった。

今、できることを最大限やる。その答えが大坂・羽曳野での“深夜トレ”だった。東京にいると大阪を拠点とする萩原氏に直接診てもらう機会は少なくなる。同氏は「僕もその翌日から富山で用事があったので、2時間睡眠でした(笑い)。でも、そこまでして来たいと言ってくれる翁田っちの気持ちに応えようと。今年はWBCもあった。とにかくコンディショニングを徹底して、1年間ケガをしないようにしようと話してます」と全力で受け止め、サポートに徹する。

3日の日本ハム戦(東京ドーム)では1点リードの9回に登板も、セーフティースクイズで同点に追い付かれてセーブ失敗。今季初のイニングまたぎで延長10回を無失点に踏ん張り、4番岡本和のサヨナラ打につなげた。「重信さんや和真さんに助けていただいて感謝したい」と守護神。もっともっと“ガチ”で圧倒的な存在へ。悔しい1日も楽しい1日も、全てを肥やしに、日々強くなる。【巨人担当 小早川宗一郎】

5月12日、広島に同点とされ肩を落とす巨人大勢
5月12日、広島に同点とされ肩を落とす巨人大勢
5月13日、広島に同点とされベンチでぼう然とする巨人大勢
5月13日、広島に同点とされベンチでぼう然とする巨人大勢