世界進出を果たしても「とにかく謙虚」だった。

英国の人気オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」でファイナルに進出したお笑い芸人、とにかく明るい安村(41)が、雑誌「ニューズウィーク日本版」の企画で、大谷翔平や坂本龍一さんらも選ばれている「世界が尊敬する日本人100人」に選出された。

エスコンフィールドで行われた6日の日本ハム-ソフトバンク戦では、副音声企画番組「球場内限定福笑い音声」に出演。いつものパンツ一丁姿に特製はっぴを羽織った安村が、弊社の記者席の背後にある、実況ブースにいた。

試合前には、大型ビジョンで紹介され一瞬、注目を浴びたが、直後に明石家さんまと大泉洋がNHKの番組収録でグラウンドに“乱入”。予告なしのサプライズに、観衆の視線は一気にさんまと大泉に、さらわれてしまった。

困った安村は、4階の実況ブースから5フロアほど下のグラウンドに向かって「さんまさ~ん、さんまさ~ん」と必死で呼びかけ、さりげなく“コラボ”を狙ったのだが、まったく気付いてもらえなかった。

世界の安村も“お笑い怪獣”のパワーには勝てなかった。

この姿があまりに切なかったので、すぐにネット用速報にしてアップした。

すると、数分後、背後から聞き覚えのある張りのある声が、飛んできた。

「日刊スポーツさん、ありがとうござます!」。「安心してください、はいてますよ!」とほぼ同じトーンだ。驚いて振り向くと世界の「TONIKAKU」があの「安心してください」の顔で、ニコニコ笑っていた。

ネットに上がった記事をチェックしてくれたのだろう。

記事にした方から直接お礼を言われることはあまりない。しかも今や世界的コメディアンになった方から直接、お礼を言われるとは、なんと光栄なことか。

ありがたく思い、3回表終了のタイミングで「ドント・ウォーリー・アイム・ウェアリング」のポーズを披露する安村が再び大型ビジョンに映し出されたので、その様子も追加して、ネット速報を更新させてもらった。

安村は北海道・旭川実の野球部OB。控え選手として99年夏の甲子園を経験している。本番では主に伝令役で、主役にはなれなかったが、緊迫した場面でマウンドに出向き、ひと言で仲間をなごませ、チームを3回戦まで導いたという。

ピン芸人はすべっても突っ込みの力を借りることができない。ある意味、タフなメンタルとセンスある言葉選びは、高校野球時代から培ってきたものなのかも知れない。同時に、周囲への感謝や礼儀を忘れない謙虚な姿勢も、長く愛され、世界でブレークする要因になったのでは。注目を浴びても決して尊大にならない。一世を風靡(ふうび)してなお「とにかくつつましい安村」の、さらなる飛躍を期待したい。【日本ハム担当=永野高輔】

大型ビジョンで紹介される、とにかく明るい安村(中央)。左はパンクブーブー黒瀬、右は元日本ハムの谷口雄也氏(撮影・永野高輔)
大型ビジョンで紹介される、とにかく明るい安村(中央)。左はパンクブーブー黒瀬、右は元日本ハムの谷口雄也氏(撮影・永野高輔)