振り返ると、広島とのCSファイナルステージ無敗突破を大きく引き寄せた5球に思えた。19日の第2戦、1-1で同点の8回2死一、二塁。コルテン・ブルワー投手(30)にとってのポストシーズン初登板だった。

「勝ちにつながる勢いを持ってくるという意味では、その自分の仕事ができたとは思える場面だったね」

代打松山と対峙(たいじ)し、カーブ、速球を交えながら4球でカウント2-2。最後は高めの153キロ直球で空振り三振に打ち取った。終盤最大のピンチを脱出し、後にサヨナラ勝利でCS突破王手。チャンピオンチームの勢いを止めない、好救援となった。

両軍「勝負手」をぶつけ合った対戦となった。8回2死から登板した3番手左腕島本は、野間、小園と左打者2人に連続安打を許した。2死一、二塁で迎えた右の4番堂林。今季は再三勝負どころを任せられてきた左腕だが「左対右」の対決となったところでベンチが交代を決断。4番手として、右腕ブルワーが登板した。「場面に応じて準備するだけだったよ」と淡々とマウンドに向かった。

しかし広島ベンチも動く。4番に左の代打、松山を投入した。今季の「ブルワー対松山」は9月16日(マツダスタジアム)の1度のみ。1死満塁から代打で対戦し、右翼への2点適時二塁打を放っていた。負けじと繰り出された、ここぞの一手。

「出てきた瞬間、(9月に)打たれた配球や球もしっかりと頭に残っていたよ。低めを得意とするいいバッターということは分かっていた。低めに投げるのはもちろん大事だけど、より低くというか。その意識をしっかり持って投げないとなとは思っていたね」

低めの変化球をはじき返された前回対戦。細心の注意を払いながら「最初のストライクをなんとか、ど真ん中以外で」と初球138キロスライダーで見逃しを奪った。

「やっぱりマウンドに上がると、初球投げるまでは、多少不安じゃないけど、いい緊張感があって。1球目、球が手から離れた瞬間から自分自身に戻れたよ」

緊張から解き放たれたその後は、150キロ超えの速球にカーブで緩急を付けて翻弄(ほんろう)。結果的には1球もバットにかすらせず三振を奪った。最高な形での、リベンジマッチとなった。

同戦でベンチに入った中継ぎ右腕はブルワー、石井、加治屋の3投手。オリックスにも頓宮や杉本ら右の強打者もそろう中、日本シリーズでも重要な場面での登板に期待がかかる。CS3連戦無失点の阪神リリーフ陣。盤石なブルペンの中で、助っ人右腕が存在感を増している。【阪神担当=波部俊之介】

10月19日 阪神対広島 8回表広島2死一、二塁、4番手で登板した阪神ブルワー
10月19日 阪神対広島 8回表広島2死一、二塁、4番手で登板した阪神ブルワー