空気は相変わらず冷たいが、風がなく青空が広がった。ソフトバンクの宮崎キャンプは第2クール最終日。日曜日とあって、今キャンプ最多の約1万6600人のファンが生目の杜運動公園に詰めかけた。寒波の影響か、例年に比べてお客さんの入りが少ないように感じていたが、ようやくホークスのキャンプらしくなってきた。

やはりスタンドの歓声は選手たちの背中を押す。ランチ特打が始まると、2本のバットを持って山川は三塁側ベンチから姿を見せた。「今日はお客さんがいるから、打ちますよ!」と笑顔で打撃ケージに向かって行った。屋外初打ちとなった2日の打撃練習では場外弾2本を含む26発の柵越え。「お客さんがいると、やっぱりホームランを打ってやろうと思うし、お客さんもそれを見に来ているのでね」。自らの調整もさることながらチームの「主砲」としての役割はしっかり理解している。この日も柳田と並んで柵越えを連発。スタンドから起こる拍手に気分も乗せられたはずだ。

快音に誘われてグラウンドに王貞治球団会長も出てきた。覚醒の期待を寄せるリチャード、石塚にアドバイスを送りながら、おもむろに語り始めたのは目が不自由にもかかわらず世界的に活躍するピアニスト・辻井伸行氏のことだった。昨年暮れに同氏のチャリティーコンサートを観賞したという。5、6メートルの距離から奏でられる演奏に魅了された。「ほんと近くで見ることができてね。ものすごい努力だろうね。7曲くらい聴いたのかな。(音の)強弱とか、速さとかね。ただ、弾くだけじゃないんだから。すごいもんだよ。指もしっかり見えたよ」。王会長は鍵盤を華麗に動く指先をじっと見つめていたという。言葉では言い表せない血のにじむ努力があったことを想像しながら音色に魅了された。

キャンプは鍛錬の場であり、チーム内競争の場。職種は違えど、伸び悩む若手選手に「さらなる努力」を-。そんなメッセージのようにも聞こえた。【ソフトバンク担当=佐竹英治】

フリー打撃でリチャード(左)が放った打球を見つめるソフトバンク王球団会長(撮影・岩下翔太)
フリー打撃でリチャード(左)が放った打球を見つめるソフトバンク王球団会長(撮影・岩下翔太)