侍ジャパン24人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる連載「侍の宝刀」。ソフトバンク栗原陵矢捕手(25)は、複数ポジションを守れるユーティリティー性を武器に、初めてトップ代表入りした。

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打って走って守れる万能戦士が生まれた転機は、中学時代だった。中学1年までは主に遊撃手。2年の頃に、福井ボーイズの南博介監督は「キャッチャーとして、視野を広げてほしかった。内野手としてなら他にもいるレベル。打って走れるキャッチャーになってほしかった」と特別な存在になる可能性を感じ、捕手に転向させた。栗原は春江工では2年春の甲子園に出場し、3年秋にはU18日本代表で主将を務めた。捕手として世代を代表する選手に成長し、プロへの道が開かれた。

プロ5年目の19年にはプロ初本塁打を放つなど、まずは打撃で頭角を現した。シーズン中には外野手不足のチーム事情もあり、未経験の外野で先発出場したこともあった。同年の秋季キャンプでは、工藤監督から「打撃力を生かす意味で捕手以外もできた方がいい。シーズンでも守ったけど、そこは継続してもらいたい」と言われ、捕手での練習を継続しながら、外野守備に本格挑戦した。

20年に一塁手として開幕スタメンを勝ち取ると、今年の春季キャンプからは新たに三塁守備にも挑戦。今季はここまで、途中出場も含めて外野で80試合、一塁で13試合、三塁で5試合、捕手で3試合に出場している(8日時点)。少年時代を内野手として過ごした器用さで乗り越え、どのポジションも1軍で守れるレベルに引き上げた。

20年11月、巨人との日本シリーズでお立ち台で「元気100倍アンパンマン!」を披露するソフトバンク栗原
20年11月、巨人との日本シリーズでお立ち台で「元気100倍アンパンマン!」を披露するソフトバンク栗原

個人的には、もう1つのユーティリティー性として「盛り上げ役」にも期待している。初めてレギュラーに定着した昨年は、試合前の声出しなどで松田からむちゃぶりを連発されるなど、徹底的に鍛えられた。「しんどいですよ(笑い)。モノマネをしたりしてますけど、そんなに得意というわけではないんですよ」。それでも、年上の選手たちに囲まれながら物おじせず、お笑い芸人や首脳陣のモノマネを高いクオリティーで披露。日本シリーズMVPに選ばれた際の場内インタビューでは、堂々と人気キャラクター「アンパンマン」のモノマネを演じきった。器用さに加えて、度胸もある。初の大舞台でも持ち味を発揮するだろう。【山本大地】