WBCに挑む侍ジャパンのメンバー30人が決定した。連載「侍の宝刀」で、30人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる。

22年11月、巨人戦で守備につく源田
22年11月、巨人戦で守備につく源田

WBCから野球に興味を持つ少年少女もいる。西武源田壮亮内野手(29)の遊撃守備は日本の誇りだ。では「見本」となるような、技術を凝縮した印象的なプレーはどれか。あえて本人に尋ねた。

「うーん、うーん…。めっちゃ難しいっす。難しい、難しい…思い浮かばない。何ですかね、何でしょう。これっていうのがないですね。守備って難しいですよね。全てが詰まっているプレーか…」

70秒間悩んで、これという答えは出なかった。「あんまり派手なプレーできないからな~。僕の場合は特別肩が強いわけでもないし、極力飛び込んだりもしたくないし」と、浮かぶのは笑顔ばかりだ。ただ、その安定感や安心感が、野球ファンを魅了し続ける。

もちろん理論はある。1月は同じ内野手の山村、滝沢らと自主トレを行った。「(滝沢)夏央はゴロの捕球時に右ひざが内側に折れて体が流れちゃう。懐がなくなっちゃって、流れて、ミスすることが多いので。右足の置き方とか位置とか待ち方とかやってますけど。僕もそういうタイプでした。山村は左足が前に出過ぎちゃうとか。それぞれありますね」。トヨタ自動車時代に徹底的に基礎を教え込まれ「いろいろ指摘されて、練習がすっごい楽しくなりましたね」と今につながっている。

源田の主な国際大会の成績
源田の主な国際大会の成績

WBCでもファインプレーでわかせる。大分での少年時代、握り替えの速さが必要なソフトボールで、侍の中枢を担う守備力を作った。子どもたちが守備で“源田2世”を狙うためには、何が必要か。

「小学生の場合は、形はどうでもいいというか、その前に『今日はショートバウンドだけ狙って、どんな形でもいいからショートバウンドで捕ろう』とか。『次は落ちてくるところだけ捕ろう』とか。形を気にし始めると足が止まっちゃうので。バウンドを見ながら動ける練習をすれば」

30歳でWBCを迎える。「全然上がっていけると思います」と自身のピークはまだまだ先に捉える。「20代中盤くらいで感覚は止まってます。30歳、ちっちゃい頃に想像してたより元気です」。だから、名手で鳴らした先輩からも思いを託される。「井端さんや金子誠さんにも『俺らがショートをできなくなった年は超えてくれ』と言われて」。広く“源田たまらん”を示す戦いから、新たな10年の始まりだ。【金子真仁】