WBCに挑む侍ジャパンのメンバー30人が決定した。連載「侍の宝刀」で、30人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる。

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ソフトバンク近藤健介外野手(29)にとって、侍ジャパン栗山英樹監督(61)は特別な存在だ。今オフ海外FA権を行使してソフトバンクに加入したが、栗山監督は日本ハム時代の恩師。近藤は「育ててもらった」と表現する。

21年8月、東京五輪準決勝の韓国戦で左前打を放つ近藤
21年8月、東京五輪準決勝の韓国戦で左前打を放つ近藤

横浜(神奈川)から11年ドラフト4位で日本ハムに入団した。12年に日本ハムの監督に就任した栗山氏とは“同期入団”だ。近藤は高卒1年目で異例の1軍キャンプ参加も経験。11年前の緊張感は、今でも鮮明に覚えている。

「まだまだ右も左も分からない中で、1軍を肌で感じ、プロ野球を肌で感じさせてもらったのは本当にいい経験になりました。1軍レベルで、実力が足りないところ、劣っていることをすぐ理解させてもらう場面を与えてもらった。今となっては本当に良かった」

同年は球団史上初となる高卒新人野手の日本シリーズ出場も果たした。栗山監督の決断が近藤を成長させた。「代表に選んでいただけるような選手にしてもらったのも栗山監督だと思っています」。決死の覚悟で「恩返し」を誓っている。

生涯打率は3割7厘、出塁率は4割1分3厘。球界屈指の巧打者は、WBCでどんな仕事を果たすのか。「もちろん、最初から試合に出たい」。そう前置きしつつ、七変化の活躍をイメージしている。「代打や1点が欲しい場面、塁に出て欲しい場面という『1打席勝負』をイメージしているところもある。自分の役割をすぐに理解する。どんなことであれ侍のチームに貢献できるように」。出塁率が示すように、選球眼にも自信がある。カメレオンのように、状況に応じた役割を果たすつもりだ。

WBC出場経験者には「足が震える」と聞いた。そんな大舞台でも、胸を躍らせる再会がある。「個人的にはなりますけど、大谷と一緒のチームで野球できるうれしさがあります。楽しみです」。日本ハム時代は、大谷翔平と投打の柱として勝利を追ってきた。「よりレベルが異次元の世界に行ってるんじゃないかな」。苦笑いしつつ、米エンゼルスで活躍する二刀流との顔合わせを楽しみにした。

近藤の主な国際大会成績
近藤の主な国際大会成績

1月。鹿児島・徳之島での自主トレ公開から表情は本気モードだった。「栗山さんが求めている野球というのは理解しています」。球界を代表する巧打者に成長した栗山チルドレンが、世界一のピースになる。【只松憲】