WBCに挑む侍ジャパンのメンバー30人が決定した。連載「侍の宝刀」で、30人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる。

侍ジャパンに招集されたソフトバンク牧原大は活躍を誓う(撮影・梅根麻紀)
侍ジャパンに招集されたソフトバンク牧原大は活躍を誓う(撮影・梅根麻紀)

ソフトバンク牧原大成内野手(30)は、突然の追加招集の打診に悩みに悩んだ。2月28日の夜、キャンプのチーム宿舎で藤本監督、三笠取締役GMに呼び出され、伝えられた。「もう寝られなかったですね。ずっと迷って、正直、行かない方がいいのかなという気持ちも強かった。やっぱりうちでレギュラーを取りたいという気持ちがすごく強かったので」と頭を抱えた。

チームではレギュラーを争う立場。侍ジャパンでは控えの可能性もあり、打撃の状態を崩すなど不安もあった。ひと晩悩んで、参加を決断。「すごく悩んだんですけど。これからの野球人生、自分の人生を考えたらこの経験を1回はしておいた方がいいのかなと思ったので」と腹をくくった。

日本の主軸として期待されていた鈴木の辞退による追加招集だが「鈴木誠也選手のケガで、代替ということにはなりますけど、なかなかあの選手の穴を埋めるというのはすごく荷が重い。そこと比べずに、自分は自分の持ち味を生かしながら頑張りたいと思います」と、自身のプレーに徹するつもりだ。

本来は内野手で二塁、三塁、遊撃をメインとしていたが、15年以降は外野もこなす。今季は「センター1本」を宣言し、定位置取りを目指している最中だった。春季キャンプでもほとんど、外野の練習しかしていなかったが、この日は内野用グラブを手に取り、練習試合前のシートノックで内野の守備位置に入る場面もあった。

牧原大は「呼ばれたのは多分、どこでも守れるということだと思うので。今年はセンター1本でというところであまり練習していなかった。少しでもやっておかないとと思って、練習しました」と、侍ジャパンで求められるであろう役割を理解し、すぐさま準備に取りかかった。

10年育成ドラフト5位でソフトバンク入り。育成の同期には侍ジャパン常連の千賀、甲斐がいる。「千賀、(甲斐)拓也はずっとジャパンに選ばれていたので、自分も選ばれてみたい気持ちはあった。今回、選ばれたのはすごくうれしいこと。やっと同じ土俵に追いついてきたのかなと思います」と感慨深げに話した。

昨季は先発、代打、内外野をハイレベルにこなす万能ぶりから藤本監督に「ジョーカー」と呼ばれ重宝された。今度は侍の「ジョーカー」として、世界一の戦いに挑む。【山本大地】