日刊スポーツは今年も全国のドラフト候補を追いかける。東都大学リーグの投手7人がドラフト1位指名された昨年から一転、24年のドラフト戦線は明大・宗山塁内野手(3年=広陵)が群を抜く遊撃守備と巧打を看板に、1位競合必至の存在になる。投手では関大の最速153キロ左腕、金丸夢斗投手(3年=神港橘)が早くも熱視線を集める。

ドラフトファイル:金丸夢斗
ドラフトファイル:金丸夢斗

アマ球界屈指の“三振製造機”が勝負の年に挑む。

関大の左腕でプロ注目の金丸夢斗投手(神港橘=3年)は「大事な1年になる。背伸びすることなく、自分の持ち味を出し続けられたらいいな。(ドラフト1位は)心の中で思っています」。仲間からは「準備はゆっくりやのに、速いのは球だけや」。マイペースな左腕が、大胆に宣言した。

熱血で野球愛あふれる親元で、兄とともに練習に没頭する少年時代だった。父雄一さんは、甲子園を中心にアマ野球の試合で20年近く審判を務め関西では、知る人ぞ知る野球人だ。「(父は)選手の時に甲子園に行けなくて。学校の先生か審判じゃないと、甲子園の土が踏めないから」。聖地の歴戦を見守り、現在の休日は「わが子の試合か、審判しに行くか」の二択だ。

兄とともに練習に没頭し、小1からは毎朝6時起きで父と兄と朝練の日々。ランに続いて、素振りやシャドーピッチングなどの朝練を親子で取り組んだ。「最初は走らされてる感はあった。それがあって自分で考えてやるようになったし、逆にやらないと気持ち悪いぐらい。(タイムが)遅かった時は言われました(笑い)」。

人生の転機は高校時代に訪れた。新型コロナ禍による休校時。中学時代まで積み上げた基礎練習を、自粛期間に再開した。「高校の指導者も練習方法を共有してくれて、2時間ほど走ったり、食事や筋トレをしたり」。それまで最速は130キロ台中盤から最速142キロへと成長を遂げた。高3夏の独自大会ではエースとして8強入りを果たした。

関大入学後も体作りを継続。「ワインドアップにしてみたら」。1年冬に野球部のアドバイザリースタッフで元阪急の山口高志氏(73)の一言で投球スタイルを確立。「自分の間で投げられるようにはなった」。2年春は同大相手に完封勝利を挙げ一気に注目浴びた。

スタミナが武器の金丸は、数々のアドバイスを参考に、投球時の力の配分も工夫する。「体の重心ってへそにあるんですけど、定まってかつ、投球動作はどこ重心があるかわかるようになってきた。強い球を投げるために、無駄な動きが入りやすいのがなくなった。力感なく100%の力が出せる」。

座右の銘は「基本に忠実に」。大学で球威が上がったのは、周囲のアドバイスと練習の成果と自覚し、体のケアにもいそしむ。「登板回数が増えるにつれて、体がしんどくなったり、ケアしないと。まだ下級生だったんで、このまま、あと2、3年は結構きついので、疲れていなくても定期的に(治療院に)行く」。

3年秋には、9月25日の立命大との3回戦で涙を流したこともあった。「(2年で)完封した同志社戦の次に、ベストゲームですよ」。2年生の22年に明治神宮大会で全国デビュー。昨年11月5日には、同大会への出場権をあと1歩で逃した。あの日本シリーズ第7戦と同じ日だ。「関西ダービーはレベルが高くて盛り上がっているけど、僕らは神宮決定戦に負けて悔しい思いをしながら見ていた」。

2023年9月16日、立命大戦で完投勝利した関大・金丸夢斗は目を赤らめて涙目で試合後キャッチボール
2023年9月16日、立命大戦で完投勝利した関大・金丸夢斗は目を赤らめて涙目で試合後キャッチボール

最終学年の今年は、ひと味違う投球で存在感を見せつけるつもりだ。NPBのスカウト陣には「持ち味は三振。直球で空振りをとって、変化球も交ぜて三振をとる力、最後まで投げ抜くスタミナ」をアピールする。リーグ戦では「(各大学から1勝ずつの)5勝は絶対条件。春の優勝なら関大は29年ぶりの選手権。まずは春優勝で後輩とアピールしたい」と意気込んだ。【中島麗】

◆金丸夢斗(かねまる・ゆめと)2003年(平15)2月1日生まれ。兵庫県神戸市出身。広陵小(広陵小少年野球部)から広陵中(野球部)と9年間軟式野球でプレー。神港橘では高3夏(独自大会)に県8強。関大で1年秋にリーグ戦デビュー。趣味は酵素風呂につかってリフレッシュすること。目標の選手は今永昇太。好きな有名人は千鳥。直球を軸に正確なコントロールとスタミナが売り。マネジャーからは“三振製造機”と名付けられた。身長177センチ、77キロ。左投げ左打ち。

今年の主な大学生ドラフト候補
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