今年も全国のドラフト候補を日刊スポーツが追いかける。速球派がそろう高校生では、生光学園(徳島)の最速153キロの川勝空人投手に注目。野手では攻守ともにレベルの高い花咲徳栄(埼玉)の石塚裕惺内野手(ともに2年)がプロから高い評価を受ける。

ドラフトファイル:石塚裕惺
ドラフトファイル:石塚裕惺

石塚は「人生を変えられるようにしたい」と、この1年に決意する。遊撃を守る右の強打者に、NPBスカウトからは熱視線が送られる。だが本人は「まだまだこれから。結局は今じゃないと思う」と先を見る。

冬の練習。気温4度の朝からグラウンドに姿を現す。千葉育ち。寒さはそこまで得意じゃないけれど「体を動かせばあったまるので。みんなと乗り越えてやっていきたい」と先頭に立つ。昨年12月から主将に就任し、チームを引っ張る自覚が高まった。

今季から高校野球で導入される低反発バットも振り込む。プロのような野太い打球音が響く。スカウトからは「クセのないフォーム」と評される。スムーズに振り抜き、鋭い打球が遠くへ飛ぶ。

「甲子園に行ってプロに行きたい」から、春夏甲子園通算12度出場の名門校を選んだ。NPBへ連続して選手を輩出する実績も魅力だった。部員100人超えの大所帯で、2年春から正遊撃手に。甲子園には届かなかったが、昨夏は県大会準Vで5割近い打率を残した。秋には県大会優勝で自身初の関東大会へ。準々決勝で敗退したが、勝負を避けられながらも本塁打を含む計6打数5安打。「夏も秋もあと1個で甲子園ってところで負けている。春夏取って3冠して、最後に甲子園に行きたい」と聖地へ手を伸ばし続ける。

ある日、チームメートに「俺ってどんな人?」と尋ねた。「おっとりしていてクラスでは静か。グラウンドでは人が変わってチームを引っ張ってくれる」との返答だった。納得の様子でうなずいた。

憧れの選手は花咲徳栄OBの日本ハム野村。いつか夢をかなえて話せる機会があったら。「いやあ、結局なにもしないで終わっちゃうんじゃないですか?」。人見知りな性格が邪魔をするかもしれないけれど、憧れの先輩との時間は夢見るワンシーンだ。

写真撮影では後ろで見守るチームメートたちが笑顔を引き出そうと一生懸命盛り上げる。「かわいい!」の声に思わず表情が崩れるが、試合となれば人が変わり、頼もしい強打者だ。野球では人見知りなんてしない。

「甲子園とプロ入り」に挑む勝負の冬。「オフは大会がなくて目標を見失いがちにはなるんですけど、最後の夏、甲子園に返り咲けるように」と夢を実現させる。【佐瀬百合子】

今年の主なドラフト候補
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