日刊スポーツ評論家の西本聖氏(64)が、プロ初登板、初先発のオリックス宮城大弥投手(19)を絶賛した。

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久しぶりに、心が沸き立つような高卒ルーキー投手を見た。オリックスのドラフト1位・宮城は、5回を投げて2失点。勝ち投手にはなれなかったが、打者に対して「打てるものなら打ってみろ」と言わんばかりの投球。球速こそ及ばないが、松坂のデビュー戦を思い出した。

初回1死一、二塁、フルカウントから浅村を内角の直球で空振り三振。捕手が構えている内角より少し甘くなったが、全くといっていいほどシュート回転しないクロスファイアは一級品。カーブのときに少し腕が緩むが、スライダーもチェンジアップの制球力やキレもまずまず。フィールディング、けん制球、クイックも、1軍で通用するレベルに達していた。

何よりもいいのは、マウンド度胸。闘志を表に出すタイプではないが、投げている球からハートの強さが伝わってくる。今試合では、捕手の伏見が必要以上に同じ球種を続けたり、ストライクがほしくなるようなカウントで内角を投げさせて2失点につながったが、もっとオーソドックスな配球で抑えられるレベルに達していた。

ファームでも49回2/3を投げており、体の強さを備えているのだろう。高校時代から完成度が高い投手だと思っていたが、さらに良くなっている。やはりプロで成長するには頑健な体は重要で、実戦経験を積むことで自らの課題も分かってくる。そして実戦で生まれた課題をクリアするために、また投げる。その繰り返しがレベルを上げる。

同期入団のロッテ佐々木朗、ヤクルト奥川は少し投げただけで肘が張って投げられなくなっている。本人が投げたがっていないのか、首脳陣が投げさせていないのか分からないが、実戦登板がなければ絶対に成長はしない。

高校時代からあまり投げられていなかった佐々木朗はともかく、奥川は甲子園であれだけ投げていた投手。それが投げられなくなっているのなら、フォームが悪い証拠。投げ方を修正しなければいけないのに、投げさせないままでは良くなりようがない。予想以上に成長している宮城の投球を見て、2人の今後が心配になった。(日刊スポーツ評論家)

先発し5回2失点のオリックス宮城大弥(撮影・渦原淳)
先発し5回2失点のオリックス宮城大弥(撮影・渦原淳)