9回、同点に追いつかれ厳しい表情でベンチに引き揚げる藤川球児(左)と鳥谷敬(撮影・上田博志)
9回、同点に追いつかれ厳しい表情でベンチに引き揚げる藤川球児(左)と鳥谷敬(撮影・上田博志)

阪神にとって今年初の甲子園でのゲーム。観衆も2万人近く入った。さあ、ここで連敗ストップだ。そんな思いが募る中、チャンスはあったが結局、引き分けに終わった。オープン戦初勝利は遠い。

正直、モヤモヤする。そうは言ってもオープン戦。勝敗は何も関係ない。それでも結果、勝敗に結びつく“流れ”というものは公式戦、オープン戦に限らずに存在すると思って仕方がなかった。

今季リーグ4連覇を目指す広島の指揮官・緒方孝市はこの“流れ”にこだわる。「こちらが有利に試合を進めていても変なプレーが1つ出るといやな感じを受ける。そうするとやはり後でピンチを迎える」。そんな話をよく聞いた。そういう視点でこの試合を見ると妙に納得してしまう。

同点で迎えた阪神のラッキーセブン。鳥谷敬の中前打で勝ち越しに成功した。遊撃競争の中で苦戦を続けるベテランに出た一撃。ムードは盛り上がる。だが次のプレーでそれはしぼんでしまった。

1死一塁で打者は現在好調のルーキー木浪聖也だ。ここで指揮官・矢野燿大は足を使った攻めを試した。一塁走者の鳥谷にスタートを切らせ、木浪に打たせる。ファウルが続いた後の7球目。鳥谷がまた、スタート。木浪は思い切り引っ張った。

打球は抜けるようにも見えたが右翼手が捕球した。しかし、このとき鳥谷は一塁に戻るどころか、すでに三塁ベース近くまで走っていた。一塁に転送され、楽々と併殺が完成。アウトカウントを間違えたのかと思うプレーだ。

鳥谷 あれはボクの判断ミスです。

三塁コーチ・藤本敦士 アウトカウントじゃない。西日も入ったり。シーズンに入れば太陽も変わってくる。失敗をプラスに変えてほしい。

つまり日光が邪魔になり、打球の行方が分からなかったということか。それによって起こったミスのようだ。

勝負に「たられば」はないといつも書くが2死一塁で攻撃が続いていれば、まだ得点の可能性はあった。しかしこれでチェンジ。1点差で迎えた最終回につながっていった。そう書けばホンマかいな? と言われるかもしれないが試合の“流れ”とはそういうことを言う。

シーズンでも犠打のサインが出る可能性の高い森越祐人がサヨナラ勝ちチャンスの9回、走者を送れない場面もあった。その表の攻撃で犠打を同点につなげた日本ハムとは対照的だった。結論を言えばオープン戦でよかった、と思う。公式戦なら、こういうミスが出る試合を虎党は決して喜ばない。(敬称略)

9回裏阪神無死一塁、犠打を失敗する森越(撮影・前田充)
9回裏阪神無死一塁、犠打を失敗する森越(撮影・前田充)