「おや? 『J.BOY』やん…?」
“二度見”でなく、そんな言葉はないかもしれないが思わず“二度聞き”して確認してしまいました。
前日27日、ヤクルト3回戦に先発した阪神のルーキー桐敷拓馬投手がマウンドに上がったときのこと。京セラドーム大阪に流れていた曲は間違いなく浜田省吾の「J.BOY」でした。
58歳のこちらが大学生の頃、イヤになるほど聞いた名曲です。同世代はもちろん、もう少し若い方々も知っているとは思うけど、それにしても22歳の新人がこれとは-。
不思議に思ったので桐敷をよく取材している虎番の三宅ひとみ記者に理由を聞いてみました。
「ご両親が好きで小さい頃からよく聞いていたそうです」
さすが番記者、即答してくれます。親御さんか。なるほど。確かにそういう年齢ではあります。
つい先日のこと。同世代の人間と最近のプロ野球選手が打席に立ったり登板したりするときに流すテーマ曲について話していたばかりでした。
「なんか最近の選手はアイドルの歌とかで出てくるよな。あんなんで気合入るんかな?」
「そうそう。昔は勢いのある洋楽とかで出てきたもんやけどな。金本(知憲)の『サンドストーム』とかワクワクしたもんな。アイドルの曲てな」
なんでも好きな曲を使えばいいじゃないか、といかにも若者から煙たがられそうなオヤジくさい会話です。そんなタイミングだっただけに突然の「J.BOY」は、正直、しびれました。
念のために言えばこれも勝負に挑む前、勢いをつけるような感じの曲ではありません。「好きなの選んでるんやからアイドルの曲と同じやん」と言われそう。
これは、もう世代というか感覚の話なので、いいとか悪いとかではないし、単なるグチ、寝言として、お許しいただきたいところ。
でも両親に影響され、好きになった曲をテーマに使うなんて、なんというか桐敷のセンスには世代を超えて通じるものを感じます。
6回途中で降板した初めての公式戦デビューでしたがキリッと気持ちが入っていたし、落ち着きのようなものも感じて、なかなかよかった。いきなりの3連敗発進の阪神ですが、今後も注目すべき選手の1人だと思っています。【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)