2023年シーズンの開幕戦は3月31日だった。対DeNA戦(京セラドーム大阪)。5カ月前の先発メンバーを思い出してみる。

<1>中堅・近本<2>二塁・中野<3>左翼・ノイジー<4>一塁・大山<5>三塁・佐藤輝<6>右翼・森下<7>捕手・梅野<8>遊撃・小幡<9>投手・青柳

あれから106試合目。阪神はついに優勝マジックを点灯させたが、先発メンバーはやはり替わっていた。

8月16日の広島戦。ノイジーがいない。梅野が死球に倒れ、小幡の名もない。何より佐藤輝が先発から外れた。この事実。マジック点灯とともに、この采配は大きく取り上げられると思った。

「鬼采配」と表現するスポーツ新聞もあったが、監督、岡田彰布にとって、鬼でもなんでもない。普通の考えを、普通に実行しただけのこと。ここまで来れば、すべてが結果。それが伴わないのだから外す。実にシンプルな思考なのである。

1980年の岡田の入団時。もう何度となく伝えられてきたが、岡田は当時の監督の不文律な独自ルールで、起用されなかった。「ルーキーは最初、使わない」。ブレイザーの言葉が耳に残っている。

以来、岡田は力をつけることにまい進した。そんなルールを覆す力を出せばいい。「プロの世界は力。要は結果を出せるかどうか。そこに年数や入団の経緯は関係ない」。入団時に刷り込まれた考えは、指導者になっても変わらないし、より強固な思いになった。

佐藤輝はルーキーではなく、プロ3年目。ここまで本当に大事に扱われてきた。ファンの支持も強いし、マスコミの注目度もチームNO・1。だから、それほど追い込まれた経験はなかった。

しかし、そこに現れたのが新監督、岡田彰布。忖度(そんたく)なしのガチンコ監督だ。選手に対し、配慮はするけど遠慮はしない。この考えは一貫している。そんな岡田が佐藤輝の1、2年目を見て「甲子園を本拠にしてシーズン20本以上のホームランを打てるんだから、そら能力はあるわな。これは持って生まれれた資質。これを大事にせんと」。認めるべきところは、認めていた。

ところがいざ自分が監督になり、早々と5番三塁の固定を明言してから、佐藤輝の持つポテンシャルは特別、発揮されぬまま、ここまできた。打率の割に打点が多い、という評価があるが、5番という打順で、その前を打つ1番、2番、4番が好調なら、打点が必然、多くなって当然。特筆されるようなものではないが、どうしても佐藤輝には、すべてが遠慮しているような風潮が見られた。

マジック点灯か…という節目のゲームで、佐藤輝に出場機会はなかった。これに対して、チームメートは「どうして? 何で?」と思っただろうか。それはないと思う。チームの中に、結果が伴わなければ、どうなるか。先発を外れる…というシビアでいて、シンプルな見方が、浸透しているように思えるのだ。

その点において、ルーキーでいて、開幕カードも106試合目も先発出場した森下は立派である。途中、挫折する時期もあったが、乗り越えて、いまやクリーンアップを担うのだから、結果を出せば起用する典型例になった。何より森下は、ガムシャラさがにじみ出る。これを岡田は買う。

同じことが佐藤輝に、いまのところ見えない。岡田の不満はここにある。ただし、このまま、佐藤輝を起用しないわけではない。またすぐに先発に戻すに違いない。使って、またベンチ。ベンチからまた使って…となるのかどうか。少なくとも8・16は佐藤輝にとっても、チームにとっても、カンフルの1日になった。あとは本当に佐藤輝次第。代わりはいる。危機感をどう表現するか。【内匠宏幸】

(敬称略)

広島対阪神 7回裏広島、ベンチの佐藤輝(撮影・加藤孝規)
広島対阪神 7回裏広島、ベンチの佐藤輝(撮影・加藤孝規)