岡田彰布の話は実におもしろい。11月29日のトラ番の囲み取材。話題が個人タイトルに移ったら、「そら全部、取ったらエエんよ」と野手陣にタイトル独占指令を出すほど。これには思わず1年前を思い出してしまった。

「打線なあ…、そんなに期待してないわ。まず守りよ。攻撃は水もの。相手より1点でも多く取ればエエだけのこと。その1点はオレが取らしにかかるから」。こう語っていたのだが、1年が過ぎ、打線にもそれなりの手応えを感じているってことなんだろう。

ここまで言えるのは、もちろん投手陣が盤石という自信があるから。それほどの充実ぶりのタイガースの投手陣である。これから先は長いが、春のキャンプ、オープン戦を無事にクリアすれば、今年以上の強力スタッフが完成する。となれば「投手陣によるタイトル独占」。こちらの方が現実味がある。

まずは先発投手陣。ローテーションは6人ないし7人で回るが、2024年シーズンはマイナーチェンジが施される。例えば2024年の開幕カードは巨人戦。この3連戦、岡田は先発投手をどう配置するか。今年まで青柳が開幕投手を務めたが、来シーズンはMVPの村上が大本命。そこからサウスポーの伊藤将が続き、3戦目は巨人に自信を持つ才木。若い投手を押し出し、2カード目は大竹、さらに評判通りならドラフト1位の下村で臨むくらいの気構えを岡田は備えている。

となれば、ここでようやく青柳、そして西勇の名前が出てくる。要するに先発ローテーションも地殻変動を起こし、実力派若手が核になる。そこでタイトル独占となれば、村上はその安定感から2年連続で防御率のタイトルに。伊藤将が最多勝の候補となり、奪三振は強烈フォークボールの使い手、才木の可能性は十分(これも1年間、ローテーションを守ることが必須)。最高勝率もこの3人に大竹が加わっての争いになるかも。

岡田が勝負の肝とするブルペン陣も陰りはない。桐敷、島本、石井、岩貞、加治屋のセットアッパー陣は最多ホールドを競う形になり、そのあとのクローザー。岡田が「来季の新戦力? そら湯浅や」と明かしたように、いきなり湯浅が一番後ろに回る可能性が出ている。では岩崎は…となるのだろうが、疲労蓄積も考慮して、起用法はツープラトン、ダブルクローザー構想も練られているにちがいない。

岩崎、湯浅でセーブのタイトル争いなんてなれば最高の展開。岡田は来季構想はまだまだ考えていないと言うが、そんな訳はない。着々と2024年構想を練り、万全の体制を頭に描いている。

タイトルではないが、新人王を下村に取らせることも可能。それくらいの起用法を岡田は平気でやってのける。これが成功すれば、将来的にも、揺るぎないスタッフになるわけで、「アレンパ」どころか長期にわたる黄金期に突入…と夢が広がる。

そんな夢構想の中、ベテランも意地を示すとみている。青柳、西勇がローテーションに入るかどうか。彼らのキャリア、実績が必ず必要になる時がくる。若手を前面に押し出しながら、ベテランのプライドをくすぐりながらの融合…。とにかく他球団を圧倒する投手陣であることは間違いない。

攻撃陣にタイトル奪取を指令した裏には、投手陣は心配なし、の根拠がある。正直、2024年シーズン、楽しみでしかない。【内匠宏幸】(敬称略)

阪神村上頌樹(2023年10月28日撮影)
阪神村上頌樹(2023年10月28日撮影)