あと10日ほどでキャンプイン。「連覇」へのスタートを切る。2リーグ分立後、初の連覇に挑む2024年シーズン。期待は膨らむばかりだが、そこには壁が立ちはだかる。38年前がそうだった。

初の日本一になった翌年、1986年。シーズン前の予想でも阪神が大本命だった。打ちまくった打線があれば…という予想だったが、僕はそのシーズンから広島カープ担当、いわゆる赤ヘル番になった。

時の監督、阿南準郎は素直に認めていた。「タイガースは強い。あの打線を抑えることのできる投手陣はなかなかないだろう」。チームの柱、山本浩二も同じ意見だった。「そらすごい打線。あれを上回ることは、なかなか難しい」とシーズン前に口にしていた。

でも当然、対策を練る。阿南が考えたのは投手陣の強化。それで阪神打線を何とか封じる。そういうものだった。そこで総力を挙げて投手力を磨いた。できあがったのが先発スタッフの強さ。北別府を軸に大野、川口、長冨、川端、金石、白武のローテーションに、セットアッパーに小林、清川。クローザーは津田。外国人抜きの投手陣で阪神に対抗。それが見事にハマり、阪神の連覇を阻止した。

阪神サイドからみれば、連続優勝の難しさを教えられたシーズンだった。バースが2年連続3冠王になったものの、他は軒並み、数字はダウン。例えば5番岡田は打率が3割4分2厘から2割6分8厘に。本塁打も35本から26本に。打点は101点から70点と急降下。チーム同様、連続して結果を残す難しさを痛感して、最終的に3位。85年には貯金25あったチームは60勝60敗10分けの勝率5割。ここからさらにチーム力を落とし、暗黒時代に入っていったのだ。

打線の影響で連覇を逃した…というわけではない。やはり当時の阪神投手陣の弱さ。これが要因だった。60勝のうち、チームの最多勝がリリーフの山本和の11勝。これでわかるように先発投手の弱体化がより鮮明になった。

この経験を味わった監督、岡田彰布は当然、投手力の再整備に力点を置く。2024年も「投手力の阪神」。これを前面に押し出す構えである。

「監督として理想のゲームは1-0で勝つこと」とする。要するに相手に点を与えなければ、勝てなくても、負けない。相手より1点多く取れば勝てる。そういうチームが強い。それが岡田の考え。だから連覇へ、さらなる投手力の強化に乗り出す。そのためのキャンプになる。

昨年示したように、投手陣はリーグNO・1。この評価は正当だろう。しかし、相手は阪神投手陣打破に躍起になる。データを洗い直し、研究し、対策を練ってくる。それを上回る進化を遂げないと、対処できない。だから、現有戦力の伸びとともに、新しい力の発掘を2月のテーマとする。すでに岡田は2年目の門別を特別強化投手に指名しているし、ドラフト1位の下村、2位の椎葉に着目。さらに現役ドラフトで加入した漆原も新戦力として考えている。

「現状に満足していては、な。常に下からの突き上げがないと停滞してしまう」。まずはケガなく2月へ。ここまでは順調にきている。「負けない投手陣」をさらに強めるために、キャンプはブルペンにベッタリ。そこに連覇のカギがある。【内匠宏幸】(敬称略)