<イースタン教育リーグ:DeNA5-2日本ハム>◇9日◇横須賀

日本ハム、ロッテ、ダイエーで21年間の選手生活を送り、その後ソフトバンク、阪神、中日で2軍バッテリーコーチを21年間(うち1年間は編成担当)務めた日刊スポーツ評論家・田村藤夫氏(61)が9日のイースタン・リーグ春季教育リーグのDeNA-日本ハム(横須賀)を取材した。イースタン・リーグの開幕が20日に迫る中、高卒ルーキーの左打者、DeNA小深田大地内野手(17=履正社)のバッティングに注目した。

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こうしてファームを取材するのは2年目に入る。昨年は感染症対策が徹底されるファームを取材するため、事前申請などの手続きがあった。今年もコロナ禍の最中にある。それでも、若手選手が試合に臨む姿を取材できる。プロ野球に長年携わってきたものとして、非常にうれしい早春の訪れだ。

平日の教育リーグだったが、熱心なプロ野球ファンの方が球場に足を運んでいた。ふと先発メンバーに目をやって気付いた名前があった。小深田。昨年はセンバツ、甲子園大会が中止となり、夏には交流試合が開催された。私はテレビ観戦でドラフトに向けて選手の力量を観察していた。その中で目を引いたのが小深田だった。それで覚えていたのだが、この日の試合でその名前はより一層強く印象に残った。

9番サードでのスタメンだった。この時期、スタメンに名を連ねているのは首脳陣からの期待の大きさと感じる。何か光るものがあるか、じっくり見させてもらった。2回の1死一塁、日本ハム先発右腕の望月大希(23=創価大)に対した第1打席が目を引いた。

初球カーブをファウル、2球目チェンジアップを豪快に空振り、3球目はストレートがボールでカウント1-2。ここから2球続けて低めのチェンジアップをしっかり選んでカウント3-2。6球目、ストライク気味のチェンジアップをファウル。7球目のストレートが外れて四球を選んだ。

ここで目に留まったのは、2球目に空振りしているチェンジアップに、この打席の中で見事に対応していることだった。中でも6球目のチェンジアップはストライクだった。このボールに対して体勢が泳ぎながらも左手をバットから外してファウルで逃れている。高卒1年目からストレート待ちで変化球に対応するのはなかなかできることではない。

ましてや、1回に2年目の森敬斗(19=桐蔭学園)が、0-1から明らかなボール球のチェンジアップを空振り、さらに続けてワンバウンドのチェンジアップにバットが空を切った。注目していた森のあっけない空振りが残像としてあっただけに、余計にルーキー小深田の対応力の高さが際立った。

第2打席は0-2から外のカーブを三塁内野安打として打点1。第3打席は空振り三振、第4打席は四球。この試合は2打数1安打という成績だった。

見る側とすれば、高卒ルーキーとして力量を測ろうとするためか、変化球を頭に入れたスイングの巧みさには、やはり光るものを感じる。根尾の1年目を知っているが、あの時の根尾がこの日の小深田と同じ状況ならば、間違いなく真っすぐ対応の中でチェンジアップを振りに行ったと思う。高卒1年目ならば、真っすぐ待ちでの変化球にはなかなか対応できるものではない。強いて言えば、19年の小園が同じような対応ができた印象があるくらいだ。

そして、ここからが肝心だが、ストレート待ちで変化球に対応できるバッティングは、高卒ルーキーとしては秀逸と感じるものの、逆にストレートへの対応はまだまだと感じた。第2打席の0-1からのストレート空振り、第3打席の0-2から143キロストレート空振り。いずれもしっかり捉えるべきボールだった。

この試合での小深田は4打席のうち、3打席で追い込まれている。まず、大切なのは追い込まれる前の早いカウントで甘い球を逃さないことだ。この日は追い込まれたケースが続き、バッティングカウントで仕留め損なったストレートという場面はなかったが、プロではバッティングカウントでしっかり仕留めることが、打率を上げるため、結果を残すためには必須となる。

追い込まれながら変化球に対応できる面は非常にいい。その一方で、ストレートを仕留めきれない課題も気になる点ではある。これが今の小深田にとっていいことなのか、悪いことなのか。それはこれから小深田が試合の中で学び、成長していく中で解決していくはずだ。

あくまでも、今日はじめて小深田を見たリポートであり、これから何試合も経験する中で、小深田がどう成長していくのか、注意深く見守っていきたい。(日刊スポーツ評論家)