<イースタンリーグ:日本ハム6-3ヤクルト>◇6日◇鎌ケ谷

捕手として通算出場試合1527、コーチとして4球団で計21年間(うち1年間は編成担当)の田村藤夫氏(61)が、ヤクルトにドラフト3位で入団した高卒ルーキー・内山壮真捕手(18=星稜)の将来性について考察した。

   ◇   ◇   ◇  

今年のファームを訪れる目的のひとつが、内山を見ることだった。バッティングも良く、捕手としての能力も高卒としては一定のレベルに達していると各球団の編成担当から聞いていた。高卒の捕手がファームで鍛えられながら少しずつ課題を克服し、やがて1軍に定着していく過程は、おなじ高卒捕手としてプロ野球を経験したものとして、見守りたくもあり、1軍で活躍するための苦言も必要と考えている。

スアレス-内山のバッテリー。まず注目したのは初回だった。先頭打者田宮が内野安打で出塁。続く今川に初球ストレートを引っ張られ左翼に二塁打。万波は三邪飛。1死二、三塁で清宮という場面。

<1>外角へスライダーがストライク。

<2>同じ外角スライダーがボールで1-1

<3>やや高めの内角ストレートを空振りで1-2

<4>外角ストレートがボールで2-2

<5>真ん中から外寄りのチェンジアップで三飛

スアレスの151キロストレートは威力があり、制球も良かった。逆球もほとんどなく、1軍クラスの投手をどうリードするか注目していた。

まず初球は力のあるストレートから入りたくなるが、簡単に初球ストレートという選択はできない。清宮も基本的には追い込まれるまではストレート狙いが予想された。ここは慎重に外角スライダーから入って1-1。

となると3球目の選択がポイントとなる。変化球を3つ続けるのか、球威のあるストレートで追い込むか。清宮も次のストライクで追い込まれるため、ここはストレート狙いで思い切ったスイングができる。

内角高めへの151キロストレートで空振りで1-2。いいコースに決まっていた。スタンドのホーム真後ろから見ていたので、細かくは分からないが、ボールだったかもしれない。しかし、清宮にしても狙い通りのストレート。対応に苦しむインコースに来たが、迷わずスイングしていた。この3球目が5球目の結果球につながったと感じた。

4球目は外角にストレートでボール。清宮の目線を外に移すが、ストレートを2球続けたことで、ストレートの意識をさらに植え付けたと言える。5球目、真ん中から外寄りのチェンジアップが結果球となるが、清宮はストレートへの意識が勝っていたためか、泳いだスイングになり内野フライとなった。

初回1死二、三塁というピンチで、内角と外角を投げ分け、球種もスライダー、チェンジアップを混ぜながらの配球。球威があり制球も安定していたスアレスに対し、安易にストレートに偏ったリードをしなかった内山の考え方に良さを見た。

プロの捕手といえども、力のある投手とバッテリーを組んだなら、球威のあるストレートでどんどん押したくなるものだ。実際にそうする捕手も多くいる。もちろん、試合状況も重要だ。1軍なら先発投手の力量、相手打線の状態によっては、ストレートでどんどん追い込んでいくケースもある。

内山は前日5日に原と組んで5回を6安打で6失点。つまり、捕手はタイプの違う投手と組む中で多くを学ばなければならない。1軍クラスの投手であっても、相手が2軍の打者であっても、狙い球を想定して、コースを投げ分け、球種を駆使してタイミングを外すという基本を怠ってはいけない。

初回、内山は無死一塁で今川に初球151キロストレートを要求し左翼に引っ張られており、このバッティングでいかに151キロでも簡単に初球からストレートでは引っ張られると感じ取ったと想像した。この観察力、打者のスイングから感じ取る感覚が捕手にとっては非常に大切になる。

私は昨年の甲子園大会で開催された交流試合で星稜の主軸だった内山を見ていた。プロでどんな配球をするのか気になっていた。

この日、盗塁の場面はなく、またワンバウンドを止めるシーンも多くなかったため、スローイング、ブロッキングを細かく見ることはできなかったが、総合力としての力はあると感じた。すでに4月には1軍に昇格して6試合に代打で出場している。まだヒットは出ていないが、高卒捕手が1年目に1軍昇格はなかなかない。それも春先の1軍デビューは内山が戦力として考えられていると言える。

この試合では3四球。3打席の中で3度しかスイングしていないため、バッティングの中身まではまだ何とも言えない。

7回の守備で気になったプレーがある。無死一塁。次打者はサード側へ犠打。三塁手が捕球して一塁に送球したが、この時の内山の打球への反応は素晴らしかった。だが、三塁手に指示した後は、足を止めて送球を見送ったまま。指示をしながら、三塁にベースカバーに走らなければならない。止まってしまったところにまだ内山にはこうしたケースでの三塁ベースカバーの習慣が身に着いていないと感じた。

捕手は一塁へのベースカバーに始まり、常に最悪を想定して足りないところを補うために足を止めてはいけない。100回ベースカバーに走って何事も起こらなくても、自然と体が反応するまで繰り返し意識して足を動かすことだ。それが、いつかチームを助けることにつながる。

最後に捕手目線から端的に言いたい。清宮は内角を課題としている。昨年のフェニックス教育リーグでも清宮のバッティングの課題を原稿にしたが、清宮は甘い変化球を仕留める力は持っているが、内角への球威あるボールには対応できない。第1打席の3球目の内角ストレート、第3打席のカウント1-1からの3球目の内角へのカットかスライダー。この2球には空振りと足元へのファウルだった。

内角を引っ張ってとらえるシーンが、この試合でも見られなかった。本人も内角への対応は頭にあるのだろう。この2球を見逃さずにバットを振ったところに、何とかしたいという清宮の苦しさが表れていると感じた。それは受け止めた上で指摘するが、一塁方向へのファウルでもいい、前に飛ばさなければ対戦するバッテリーは清宮に怖さを感じない。清宮は乗り越えなければならない。(日刊スポーツ評論家)