今回は、巨人に移籍した小笠原慎之介投手(28)のピッチングをリポートします。
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5回を投げて5安打8奪三振での2失点だった。91球を投げていたが、私が見た中では失投は1球だけだった。それがカリステに許した2ランになった。カウント2-1、バッティングカウントで内角を選択した。
この日の真っすぐの最速は147キロ。ここで投げたのは141キロだった。私の目にはカットボールが曲がりきれなかったように映ったが、実際は真っすぐだった可能性も捨てきれない。カットボールと考えると、曲がり切らなかった失投だった。
打たれた瞬間、小笠原は後ろを向き、下を向いてしまった。ここだけは失投が許されないポイントの1球を、制球ミスしたことを深く戒めているように、その背中を見て小笠原の胸中がうかがえる思いがした。そして、少ししてホームに向き直ると、捕手に向かって軽くジェスチャーをしていたが、それが私には自分の失投を認め、反省しているしぐさに見えた。
三振は8つ。うち真っすぐで3、チェンジアップで3、スライダーあるいはスイーパーで2という内訳だった。中日時代の小笠原は、真っすぐ、チェンジアップ、カーブのコンビネーションで組み立てるピッチャーだった。NPBに復帰して、久しぶりにピッチングを見たが球種が増えていたことは新鮮に感じた。
スイーパーと呼んでもいいくらいスライダーの曲がりは大きかった。そしてこの大きく曲がるスライダーがあるからこそ、カットボールも生きると感じる。そのカットボールの制球ミスでカリステに痛打されるのだが、それも1軍登板への貴重な教訓として、しっかり胸に刻んでほしい。
せっかく中日相手に投げたのだから、ちょうどファームに木下がいたため、久しぶりに小笠原のピッチングを見た木下の感想も聞いてみたいと思い、ベンチを訪れてみた。木下の感想は「ツーシームとカットボールはこれまであまり投げてなかったと思います。いいですね。今日のピッチングを見る限りでは、良くなっていると感じました」と話してくれた。
これからは敵として対戦することになるが、ファームで偶然が重なって小笠原の投球を見ることができただけに、木下の本音が聞けたような気がして、大変参考になった。これが1軍で対戦することになれば、そんなゆったりした気持ちではお互いいられないだろう。やるか、やられるか、そういう戦いの中で勝負することになる。
試合前、ランニングを終えた小笠原とほんの短く話すチャンスがあった。「久しぶり」と声をかけると、うれしそうに小笠原は「ごぶさたしています、田村さん」とにこやかに笑顔で応えてくれた。すかさず「巨人のユニホーム似合ってるな」と言ってやったが、小笠原は即答で「よく言われます」と笑っていた。元気そうで、とても安心した。
さあ、巨人移籍して初登板は目の前に迫ってきた。19日の中日戦での復帰初登板の可能性がある。いきなり古巣との対戦となるが、それは本人にはあまり関係ないように思う。私の経験上、投手は味方打者のバッティングはそれほど細かく研究はしない。当然のことだが、相手打者のことで頭がいっぱいだ。味方のことは、先発した試合の中で「打ってくれ」と思うくらいだろう。
これはなんとなくのイメージだが、古巣に投げる時、抑える印象が強いと感じるファンの方もいるかもしれないが、現実はやはり甘くない。むしろ、打者の方が味方投手のことは後ろからじっくり見ているから、球筋や、攻め方など印象として残っている部分もある。
中日打線で、バリバリのローテーション投手だった小笠原をよく知る打者は、大島や木下、阿部くらいだろう。19日に小笠原が先発したとして、中日打線がどんな顔触れになるか分からないが、小笠原にも、中日バッターにもヒリヒリする真剣勝負になるだけだと想像する。
巨人のユニホームで、躍動する小笠原が、カリステに浴びた一発で学んだ反省を、どう生かすのか、私はそこに集中してテレビでピッチングを見守りたい。(日刊スポーツ評論家)





