夏が終わっても、友情に終わりはない。

 大阪大会。ダブルエースでこの夏に挑んでいた上宮は、29日の準決勝、大冠戦で敗れた。

 「背番号3」の投手・人見健太(3年)が先発したが、5回に4安打をあびるなど、5回6安打3失点。村田侑右監督(31)は「(イニングは)半分半分と決めていた。3点取られたら、取り返せないので」と「背番号1」の巻大地投手(3年)への継投を決断した。6回からマウンドに上がった巻は4回を3安打無失点に抑えた。それでも味方の援護が無く、1-3での敗戦だった。

 今大会は2人で試合を分け合うように投げてきた。1回戦は巻、2回戦は人見が先発。3回戦と4回戦は人見から巻に継投した。5回戦では先発の巻が5-1から1点差まで詰め寄られた8回に人見へ継投。人見は無失点に切り抜けて火消しに成功した。準々決勝では反対に人見から巻へリレーした。

 準決勝の前日、どちらが先発か、まだ分からなかった2人は言い合っていた。

 「どちらが先発でも、力のある打線だから甘く入ったらいけない。お互いに後ろにいるから思い切っていこう」

 1年生からともにベンチ入り。先に頭角を現したのは巻だった。追うように人見も力を見せ始めた。2年生の時からダブルエースとしてけん引。昨秋の「背番号1」は人見で今春は巻。毎大会どちらが「1」を付けるか分からない状況で、大会直前には口もきかない時期もあった。互いにプライドもあった。巻は「練習試合で人見が抑えていると複雑な気持ちになった」と素直に振り返った。

 最後の夏、エースナンバーを背負ったのは巻だった。背番号が発表され「ここまで来られて優勝に向かって頑張ろう」と気持ちを1つにした。人見が「お互いに高め合ってやってこれて、ここまで投げられるようになったのもあいつのおかげ。巻にも感謝したいです」と言えば、巻も「今振り返ったらいいライバルでした」。村田監督は「あの2人がいなかったら絶対ここまで来ていないです」と2人のエースをたたえた。

 上宮の19年ぶりの出場はならなかった。甲子園出場の夢はつかめなかったが、巻にも人見も、残ったものがある。

互いに唯一無二の存在としての絆だった。【磯綾乃】