矢野燿大率いる「令和阪神」はここからがスタートだ。そう書くとなんて能天気なヤツなんだと思われるかもしれないが、結構、前向きに考えている。

12日ソフトバンク戦に勝った時点で「6」あった貯金を約1週間ではき出し、5割に逆戻り。引き分けを挟んで6連敗だから当然だが、この間、さまざまなことがあった。これまでと違ったのは矢野が怒りをあらわにするようになったことだ。

この日は過去、最高レベルの激怒モードだった。虎番記者の記事にもあるように8回、木浪聖也が本塁へ突っ込まなかったことに怒り、懲罰交代まで行った。ベンチで木浪を“公開説教”する場面までテレビ画面に映っていた。

15日オリックス戦でも大山悠輔の走塁を巡って怒った。いずれもやるべきこと、やって当たり前のこと、「フツー、やるやろ」ということができないときにそうなっている。

今季、矢野はベンチのムードを明るくするため工夫してきた。その象徴がガッツポーズだ。口で「元気を出していこう」と言うより、安打が出たり、うまくいったりしたときに身ぶりで示そうというのは分かりやすい。同時に選手もほとんど責めなかった。

それでも消極的な失敗に怒り、指導するのは当たり前のこと。だが難しい。「最近の若者は…」という言い方はしないよう心掛けているが指導方法が昔と違っているのは明らかだ。前任者・金本知憲もそれで苦労したのだが萎縮させず、是正していくのは難しい。プロ野球も世間も同じだ。

闘将・星野仙一のおそろしさは有名だったがセットでヘッドコーチ・島野育夫のフォローがあった。星野が選手をしかりとばし、裏で島野がなぐさめる。そんな連携プレーだった。

矢野にも信頼して阪神に招いたヘッドコーチ・清水雅治がいる。そのあたりを含めて聞いてみた。

「あれは次の準備ができていないということです。それをどうするか、そういうことでしょう。それを含めてやっていきます。もちろん自分の役割は分かっています」

そんな話だった。いいときは褒め、悪いときは叱りとばせばいい。それで選手が元気をなくす必要もないのだ。交流戦で苦労するのも今に始まったことではない。精神面での課題も出て、5割で再スタート。さあ次の試合だ。それでいいではないか。(敬称略)

阪神対楽天 8回裏阪神無死一、三塁、近本の三ゴロで三塁走者木浪が本塁生還できず、ベンチでがっくりする矢野監督(撮影・前田充)
阪神対楽天 8回裏阪神無死一、三塁、近本の三ゴロで三塁走者木浪が本塁生還できず、ベンチでがっくりする矢野監督(撮影・前田充)