藤川球児が村上宗隆を空振り三振に切ったところで思わず「ここからやで」とつぶやいてしまった。最も緊張する場面をしのいだ後が野球はこわい。後出しジャンケンのように書いて申し訳ないけれど多くの試合を見てきて、そう思った。

壮絶な幕切れの試合だったがそもそも流れがよくなかった。今季3試合目のスタメンマスクとなった梅野隆太郎の決勝1号となれば気持ちよかったが甘くない。7回まで3度も無死で走者を出しながら得点にできなかった。これはヤクルトも同じなのだがジリジリするような展開は後攻めに有利に働いたということか。

なかなかいいところが見つけにくい現状の阪神、特に気になっているのが福留孝介だ。この日も5番左翼でスタメンで出たが無安打。4回の痛烈な一塁ライナーが安打になっていれば…と思ったが現実として結果は出なかった。

2カード6試合を終え、20日巨人戦以外の5試合にスタメンで出ているが安打は2本だけ。新加入ボーアが打てない中、ベテランにカバーしてほしい部分もあるが、こちらも不振とあって、それがそのままチームの結果につながっているように思えてしまう。

2月の宜野座キャンプ最終盤、福留と少しだけ話した。4月で43歳になった球界最年長。プロ22年生がゆっくり休めるような状況になれば阪神は強くなるのでは、という内容だ。高山俊を中心に若手でいければ…と失礼を承知で話してみた。福留はこう言った。

「自分ができなければ、そうかもしれませんね。でもできたらどうなのか。周囲がどう見ているかは知りませんが自分はできると思うからやっている。若い選手がそこを超えていくかどうか。自分から譲るとかそういう気はさらさらないですよ」

納得できる言葉だった。並みの選手でないことを知っている以上、今でもその言葉を疑ってはいない。そうは言っても長いシーズン、フル出場はできない。横浜スタジアムに移っての26日DeNA1回戦は左腕・今永昇太の先発だ。

ここは大山悠輔の左翼スタメンとなるか。高山で来るか。それとも。いずれにしても福留の復調は今後の反撃へ必須条件だろう。若手も打って、福留も元気になってと、いい意味で誰を起用するか指揮官・矢野燿大を迷わせるような状況に早くならないといけない。(敬称略)【高原寿夫】