延長で決着した試合を見ながら、なぜか昔に闘将・星野仙一と“論争”したことを思い出した。恒例だった虎番記者キャップたちとのいわゆる「お茶会」でのこと。ちょっとしたことをキッカケに「野球とサッカーはどちらが勇ましいか」という話になった。

「硬球は当たったら死ぬこともあるんやぞ! 野球に決まってるやないか!」。野球代表の星野はそう言って譲らない。我々、記者連中は「監督。サッカーは雨でもやりますよ。野球は休むけど」などと返す。どうでもいい話題だがムキになる闘将が面白かった。

その結論は今でも出ていない…というか特に出ることもないだろうと思うのだがハッキリしていることが1つだけある。サッカーは1点ずつしか得点されないが野球は最大一気に4点が入ることだ。

広島との接戦、勝敗以外にも“あるポイント”で両軍はデッドヒートを繰り広げていた。1回に飛び出したサンズの先制3ラン。これは今季チームにとって8本目の3ランだった。この時点で3ラン数で阪神はリーグ最多タイに並んだ。

試合前までリーグ・トップは8本の広島だった。これで並んだ…と思っていたら5回、菊池涼介に3ランが出て突き放された。だから延長10回、2死一、二塁で大山悠輔が打席に入ったとき「3ランを打て!」とひそかに念じていた。適時三塁打で試合に勝てたので文句はないのだが1発出ていれば最高だった。

本塁打数そのもので阪神は巨人、DeNA、そして広島に劣っている。そんな中で3ランに限って広島とトップを争っているのは面白い。もっと言えば満塁本塁打を含めた3ラン以上の本塁打数も12本と広島に次ぐ数字になっている。

本塁打が課題と言われてきた阪神。それを克服するためにサンズ、ボーアを新しく加入させた。それでも甲子園を本拠地にしていることもあってか、なかなか本塁打数でリーグ上位に入ることはできない。

それでも3ラン以上の効果的な1発が多く出れば本塁打の数そのものは関係ないかもしれない。もちろん大事なことはどこで本塁打が出るか、だ。

シーズンの折り返し60試合を終えて貯金1。巨人に3連敗を喫して始まったことを考えれば、なんとか盛り返してきたと思う。さあ13連戦で始まる9月。この貯金をどこまで増やすことができるか。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

広島対阪神 5回裏広島2死二、三塁、同点の左越え3点本塁打を放った菊池涼はナインに迎えられる(撮影・加藤孝規)
広島対阪神 5回裏広島2死二、三塁、同点の左越え3点本塁打を放った菊池涼はナインに迎えられる(撮影・加藤孝規)