この日は「親子ゲーム」した虎党も多いはず。鳴尾浜で行われたウエスタン・リーグのオリックス戦で阪神がリーグ記録に並ぶ13連勝をマークした。勝ち投手は藤浪晋太郎。失点した直後に出た江越大賀の逆転2ランが効き、藤浪もいい表情を浮かべていた。

「ウルトラ気持ちいいっす!」。その勝利、ヒーロー2人を見て、そんなセリフを思い出した。6年前、15年7月24日DeNA戦(甲子園)だ。先発藤浪は実に152球を投げて完封勝利。7回に江越が先制決勝2ランを放っている。

ヒーローインタビューで開口一番、藤浪が叫んだのが「ウルトラ気持ちいいっす!」という言葉だった。「ウル虎の夏 2015」として開催された試合だったので、翌日、ベンチで藤浪に声を掛けた。「あれは球団の誰かに指示されたん?」。

藤浪の答えはこうだった。「いえ。『もう、ここは何か言わんとあかんな』と思って。自分で考えました」。遊び心のある若きエース候補を頼もしく、愉快に思ったものだ。

あれから時は流れ、藤浪は苦しい状況に陥っている。浮上のきっかけをつかんだかと思えば、また沈む。長いトンネルだ。野球エリートの彼にしても人生は簡単ではないと思わずにはいられない。

それでもやはり藤浪だなと思うのは2軍戦とはいえ、記録が掛かった大事な場面で“出番”が巡ってきたということだ。もちろん偶然だが、やっぱりこの男には「野球の神様」が何かを与えているのか、と思ってしまう。

ナイターでも阪神は勝った。今季3敗を喫している苦手の坂本裕哉を攻略しての圧勝。先日も書いたが今季は妙に左腕から本塁打を放つ近本光司が坂本から先頭打者本塁打をマークし、優勢に進めていった。

もちろん「プロとして恥ずかしいようなプレー」と指揮官・矢野燿大が表現したように5回に大山悠輔(悪送球)、6回にロハス(トンネル)と失策も噴出。文句なしの勝利ではなかったかもしれない。それでも勝つと負けるのとでは大違いの試合だろう。

「親子連勝」を見て思ったのは、やはり藤浪は1軍が似合うということだ。6者連続三振とファームではやはりモノが違う。今季の阪神は開幕戦で藤浪が投げたところからスタート。「歓喜のゴール」にも「背番号19」の力は必要なはずだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)