佐野恵太、オースティンとDeNAの主軸にガツンとやられての大敗だ。ヤクルトとの2試合といい、今週の敗戦は3つともこんな感じ。四球直後の初球、制球ミスで本塁打されるなど反省点はある。それでもずっと勝つわけはないし、余裕を出せる立場ではないが「ここはひと息…」か。

とはいえ虎党にすれば面白くない試合だろう。試合前まで5勝1敗と得意だった横浜スタジアムで「エエとこなし」である。その「エエとこなし」の1つに「7番右翼」でスタメン出場した小野寺暖も数えられるかもしれない。

苦しい日々の1軍を横目にファーム、ウエスタン・リーグで阪神はこの日、18連勝をマーク。すさまじい勢いだ。「1軍がこれやったら、もう優勝決定とちがうか」。そう思う虎党もいるかもしれない。だけど1軍と2軍は違う。その間には当然、大きな差がある。

そのウエスタン・リーグの首位打者は小野寺だ。若いが打撃がいい。使ってみよう。首脳陣がそう思っているからこその1軍、スタメンだ。この日は選択肢として糸井嘉男、あるいはロハスもあったはず。しかしDeNA先発が左腕・今永昇太でもあり「いっちょ、やってみろ」と起用されたのだろう。

だが今永の前にボール球を振らされるなど3三振。最後も左腕・田中健二朗の前にボテボテの投ゴロだ。三振は仕方がない。好投・今永はレギュラーの面々も打てなかったし、結果が出ないのも無理はないかもしれない。それでもフレッシュな男に何かを見せてほしいと思った。酷かもしれないが、それがあれば少しは楽しく感じられた敗戦だったかもしれない。

取り越し苦労と思うがこわいのは「2軍では打てるのにな…」という選手になることだ。若い小野寺にそんな心配は不要だけど、この世界、そういう選手は過去に多くいたし、今でもいる。阪神に限った話ではない。だからこそファームで首位打者を走る勢いのまま、1軍でも相手にしっかり食らいつく気概を見せてほしいと思う。

「チームの雰囲気を変えられるように頑張りたい」。先月29日に今季4度目の1軍登録された際にそう言った小野寺。自分自身のためにも頑張ってほしい。なによりも優勝にもっとも近い位置にいる1軍で試合に出場できる幸運に恵まれているのだから。奈良出身の元気者に期待したい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

7回表阪神無死、空振り三振に倒れる小野寺(撮影・江口和貴)
7回表阪神無死、空振り三振に倒れる小野寺(撮影・江口和貴)