今季2度目の先発登板だったヤクルト金久保優斗から佐藤輝明が1回に先制2ランして優勢にスタート。その回、中野拓夢にも2ランが出る。おまけに小幡竜平にまで7回、プロ初本塁打が出て阪神が圧勝した。

知将・野村克也が阪神監督だった99年、よく話を聞かせてもらう機会があった。特に名言というような感じではなかったのだが妙に記憶に残っている言葉がある。こんな感じだ。

「シーズンにはな。どうやっても負ける試合がある。反対にな。放っといても勝てる試合もナンボかあるんや。ほとんどはそうじゃないんやけど」

この試合を見ていて、そんな言葉が思い出されてきた。ヤクルトはブルペン陣もピリッとしないし、失策も出るし、この日に限っては勝てる内容がなかった。ベンチ、監督の采配とはほとんど関係のないような感じで試合が進み、阪神は今季5勝目をマークした。

だけどこの勝利はまずまず大きい。今季2度目のカード勝ち越しだ。カード勝ち越し…。なんとも甘美な響きである。そして細かいけれど○●○での勝ち越しは今季初めて。つまり「連敗しなかった」のも今季初だ。こういうのは少しだけチームが落ち着いてきたムードをもたらす。

これで「借金15」。今後のカードをすべて2勝1敗で勝ち越していくと仮定し、5割に戻すには15カードが必要。具体的には交流戦後の最初のカード、6月17日からのDeNA3連戦(甲子園)までかかる計算になる。これも単純計算で、その間、45試合なので71試合目ぐらいか。

そう考えるとまだシーズンの半分やん! と思えるのだが、当然、そんなに簡単ではない。1カード勝ち越すのがどれだけ大変か今回のヤクルト3連戦でも分かったし、負け越し、連敗もあるだろうし。あらためて開幕から負けすぎたな…と思ってしまうのだが。

それでも嘆いてばかりでも仕方がない。「ベンチ、監督の采配とはほとんど関係のないような感じ」と書いたけれど近本光司の四球、盗塁から相手ミスを誘って追加点を挙げた6回の攻撃はいやらしくて、よかった。こういう攻めを続けていけば光明は差してくると信じたい。

まずは26日から、今季すでにカード3連敗を食らっている中日、巨人を相手に借りを返すところから再スタートだ。今月残りの戦いは今後に向け、重要である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 1回表阪神2死一塁、2点本塁打を放つ阪神中野(右)(撮影・狩俣裕三)
ヤクルト対阪神 1回表阪神2死一塁、2点本塁打を放つ阪神中野(右)(撮影・狩俣裕三)