自力優勝消滅-と言っても、とりあえず数字上の話だ。上位球団と阪神の勝敗によって“復活”することもあり得る。そもそも開幕9連敗と最悪の形でスタートした今季、阪神が優勝できると思っている人は、ほとんどいないだろう。

我々を含めメディアは低迷の象徴としてそこをクローズアップするが勝負事の「自力」と「他力」はなかなか微妙な話だ。自分が全力を出せても相手がそれを上回れば勝てないし、こちらがイマイチでも敵が不調なら勝てるときもある。

絶対に勝てる試合はないし、反対もそう。だからこそ、いつも思うのは勝敗以前に試合に入っていくときのムード、雰囲気といったものが大事なのでは-ということだ。

この日、ロハスが1軍に昇格してきた。2軍ではまずまず好調。交流戦とともに復帰と思っていたが首の寝違えがあり、合流が遅れた格好だ。それは仕方がないが、ようやく昇格させたのなら、スタメンで使えばいいのにと思った。

失礼だけどロハスは「この男さえ合流してくれば…」という存在ではないだろう。打率などの成績を見て、そう思う。しかし上げたなら使えばいい。とりあえず前の試合には不在だった選手が来た…というムードづくりには役立つ。正直、小野寺暖にスタメンはまだ荷が重いように見えるし、この試合に限ればロハスのモチベーションに期待してもよかった気はする。

対照的だったのは藤浪晋太郎だ。昇格即登板。ビハインドの展開だったが9回に出てきたとき、甲子園は多いに沸いた。もちろん、なんだかんだ言いつつ球団を代表する顔である藤浪と、2年目もいまひとつ記憶に残る場面のないロハスの立ち位置はまったく違う。それでも、とりあえず態勢を整え直したぞ-という気配を感じたかった。

「選手個々が調子を上げていかないと…」。この日は出なかったがこれは指揮官・矢野燿大が今季、よく口にする言葉だ。率直な気持ちだろうが指揮官自らがそう言っていてもな、という気はする。もちろん実行しているとは思うけれど、調子を上げさせる起用、意識付けをさらに実行してほしい。

繰り返すが「自力」と「他力」は絡み合っているものだろう。頑張っていれば相手がコケることだってある。少しでも上に行くため「これが今のベスト」と思うことを続けるしかない。(敬称略)