「また、やった」。そう感じた虎党もいるだろう。8回2死一塁から途中出場のヤクルト三ツ俣大樹が三塁線へゴロ。これを佐藤輝明がファンブルする失策を記録してしまった。

これまでのオープン戦でも送球エラーなどがあり、指揮官・岡田彰布から「横着な守備しとるな」と言われていた佐藤輝。三塁のレギュラーを約束されている立場だけにしっかり守りたいところだった。

「前に落としてほしかったけれど、あそこに飛んだ打球は日向と日陰の切れ目で難しい」。神宮のデーゲームをテレビ解説した阪神OBで名手の鳥谷敬氏(日刊スポーツ評論家)はそう説明していた。

「いいな」と思ったのはその後の佐藤輝の様子だった。マウンドの秋山拓巳の元に行き、何ごとか謝罪した後、切り替えて守備位置に戻る。その表情は平然としている様子だった。

「サードは絶対にミスが出る。すべてのポジションでもっとも強い打球が飛んでくる守備位置だから。それが出たときに平気な顔をしていられるかどうかが大事なんです」

これは今季からコーチとして阪神に復帰した今岡真訪が日刊スポーツ評論家時代に話していたことだ。これも鳥谷氏同様、やっていた人間にしか分からない感覚だろう。その意味で、この日の佐藤輝は「合格」だったかもしれない。

岡田は佐藤輝のフル起用を宣言している。「使うよ。使わなしゃあないやろ。そんなん」。キャンプ中にはそうも言っていた。主力としてチームにいる以上、よほどのことがない限り、使う。それも三塁に固定しながら。シンプルで分かりやすい考えだ。

長いシーズン中、いいときも悪いときもある。大事なのはメンタルの部分で極度に落ち込むことがないようにすることだ。独断と偏見で言えば、佐藤輝には現代若者風の、どこかひょうひょうとしたムードが漂うと感じている。

見方を変えれば、それは“ずぶとさ”につながってくるのかもしれない。プロには絶対に必要なものだ。ミスでメンタルを鍛え、戦いに臨んでいければ-。失策を減らす練習は当然としても「スター」の雰囲気が佐藤輝にはある。

敵将・高津臣吾がリクエストするなど真剣勝負の雰囲気も出てきたオープン戦。レギュラーシーズン開幕はもうすぐだ。試行錯誤しながらの佐藤輝の「3年目の進化」を見たい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 8回裏ヤクルト2死一塁、三ツ俣の打球をファンブルする佐藤輝(撮影・上田博志)
ヤクルト対阪神 8回裏ヤクルト2死一塁、三ツ俣の打球をファンブルする佐藤輝(撮影・上田博志)
ヤクルト対阪神 8回裏ヤクルト2死一塁、三ツ俣の打球をファンブルする佐藤輝(撮影・上田博志)
ヤクルト対阪神 8回裏ヤクルト2死一塁、三ツ俣の打球をファンブルする佐藤輝(撮影・上田博志)