オープン戦最後のスタメン。これが3・31岡田阪神の開幕オーダーだ。指揮官・岡田彰布はそんなことは隠さない。虎番キャップたちに囲まれる中、実質、唯一の競争になっていた遊撃手について「小幡(竜平)でいく」と明かした。

その決定について「決め手は?」と聞かれた岡田の答えが面白かった。「決め手もくそも小幡でいくっていうことやから。数字とかで決めるんやったらオレらは関係ないやんか」。

以前にも書いたが、闘将・星野仙一は常々「競争、競争と言うけれど結局、ポジションはこちらが与えるもの」と口にしていた。それが指揮官の重要な仕事だからだ。岡田も小幡の起用を自身の決断によるものと、ハッキリ示した。

晴れて開幕スタメンとなれば、小幡にとっては初めてのことだ。フレッシュな活躍に期待は膨らむ。だが同時に“落選”となった方も気になった。「今年がチャンス」とキャンプから頑張ってきた木浪聖也だ。

「できる努力はしてきたつもりなんで。そこは仕方がないですね。正直、期待してたんですけどね。でも、これで終わりじゃないし。そりゃあ開幕は大事だけど、シーズンは最後の方が重要ですから。これから頑張っていくだけですよ」

気持ちを入れ替えるように話した。これも木浪の言う通りである。岡田はできるだけメンバーを固定させて戦いたい理想を持つが、それも流れの中で変化することは主軸野手も含めて当然、あるはずだ。

それでいけば、たとえば糸原健斗も同じだろう。この日は代打で空振り三振を喫した。開幕後もまずは代打要員だろう。これまでスタメン起用が多かった選手からすれば、穏やかな気持ちではいられないかもしれない。

「何か聞きたいことありますか? 『頑張るだけです』…って、ボクはそんなこと言いませんよ」。硬派のムードを醸し出す糸原はニヤリとしながらそう言った。その表情からは「チャンスがあればスタメンを奪ってやる」という気概を読み取れた。

シーズンは長い。何が起こるか分からないのは誰でも知るところだ。大事なのは当初の構想と違ったとき、どういう形で戦えるか。言葉で言えば「選手層の厚さ」という表現にもなるのだろうが、そんな言葉だけでは表現しきれないエネルギーが、今のチームにはあふれている気がする。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

オリックス対阪神 7回表阪神1死一、二塁、糸原は三振に倒れる(撮影・上田博志)
オリックス対阪神 7回表阪神1死一、二塁、糸原は三振に倒れる(撮影・上田博志)
木浪と遊撃のポジションを争う小幡(2023年3月17日撮影)
木浪と遊撃のポジションを争う小幡(2023年3月17日撮影)