試合の流れが阪神に傾いたのは、独断と偏見で言って、6回表だったと思う。同点でソフトバンクの攻撃は2死一塁。ここで敵将・藤本博史は“切り札”を切る。俊足・周東佑京を代走に送ってきたのだ。

プロ野球には勝敗とは別に「プロならでは」という見せ場がある。ソフトバンクとの対戦なら、その1つに「梅ちゃんバズーカVS甲斐キャノン」があるだろう。残念ながら? この日、甲斐拓也の強肩は見られなかったが梅野隆太郎のそれはこの場面で出た。

好打者・栗原陵矢の2球目に周東がスタート。明らかに速い。栗原が見送ったストライクを捕球した梅野は二塁へ力強く送球。球は二塁ベースに入った遊撃・木浪聖也の地面に下ろしたグラブのところにズバリと来た。間一髪アウト。よっしゃ! 今季最多4万2631観衆をのみ込んだ甲子園が沸く。

「あそこじゃないとアウトにならないところに梅野さんが投げてくれたんで。スライディングが強かったんで(体を)もっていかれそうになったけどグラブを置いてたところにスパイクが来たんでね。グラブに傷は付いたけどアウトにできたんでよかったです」

木浪はそう振り返った。このビッグプレーで試合の流れは阪神に傾く。5回までミエセスの犠打による1点だけに抑えていたベテラン左腕・和田毅をその裏にとらえた。ヒーローとなった原口文仁、佐藤輝明がマークした3点で阪神は勝利したのである。

「梅野から木浪へのあの送球は本当にピンポイント。向こうが切ってきたカードをドンピシャで刺したんだから大きいよ」。現役時代は名遊撃手だったヘッドコーチ・平田勝男もそう振り返った。

面白いのは指揮官・岡田彰布である。「あれな。なんでかな。流れを変えたかったんか」と相手の盗塁企図を不思議がった。冷静になれば2死一塁。二塁に行かれても打者勝負でいいし、栗原がイヤなら歩かせてもいい。次の甲斐に代打を出すにはイニングが若い-。そんな感じだろう。

現実主義者の岡田はそう見たようだが、もちろん勝利はうれしい。「これは大きいぞ」とボソリつぶやいた。順位は別にして常に強いイメージのソフトバンクを相手に先勝。これで交流戦は7勝8敗1分けとなった。残り2試合。「交流戦貯金」に望みをつなぐ初戦勝利である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)