独断で言わせてもらって「プロの厳しさ」をまざまざと感じた試合だ。1点差の7回裏、1死一、二塁で打席に佐藤輝明を迎えた場面。敵将・原辰徳はマウンドに5番手・高梨雄平を送った。すると右翼席を中心に虎党から大きなブーイングが巻き起こる。

言うまでもない、あの理由だ。前回登板だった7月2日のGT戦。その試合で高梨は近本光司に死球を当ててしまい、右肋骨(ろっこつ)骨折の事態につながっている。

ここで佐藤輝は同点適時打を左前に放つ。さらに坂本誠志郎の犠飛で1点を勝ち越し、なおも2死一、三塁。そして高梨は伏兵とも言うべき左打者・小幡竜平に左中間を深々と破るダメ押しの2点適時三塁打を食らうのだ。

「左キラー」として仕事ができなかった結果だろう。注目するのはその配球。制球に苦しんでいた面もあるが佐藤輝、小幡には厳しい内角攻めがなかった。そこを狙い澄ましたように佐藤輝、小幡は真ん中から外寄りの球を逆方向に打ち返したのだ。

もちろん切り替えていたとは思うが、それでも死球の幻影があって投げにくかったか。そう思えて仕方がなかった。「伏線」というとおかしいが前日25日に高梨が取った行動もある。練習時に高梨は近本に謝罪し、さらに早大の先輩に当たる指揮官・岡田彰布にも頭を下げていた。

アスリートらしい気持ちのいい光景ではある。だが同時にプロ野球だ。プロとは食うか食われるかの世界である。故意に当てたのではない。巨人側からすれば、敵将・原辰徳からすれば、高梨には死球覚悟で佐藤輝や小幡に投げ込んでほしかったかもしれぬ。

逆に阪神側から見れば虎党を含め、高梨をのみ込んだ結果だろう。「高梨は投げにくかったのかも?」。指揮官・岡田彰布にそこを聞いてみた。その答えがまた独特である。

「おお。あそこな。近本に『代打いくか?』言うてたんや。昨日は『(早大の)後輩の高梨です』いうて謝ってきてたけどな」

もちろんジョークだ。しかし高梨をのみ込むような流れは岡田も十分、感じていたはず。これで27日の結果に関係なく、週末、強い広島との首位攻防戦は確定した。巨人もこのままでは終わらないはず。甲子園を高校球児に明け渡す前の甲子園残り4試合。目が離せないプロの戦いが続く。(敬称略)

阪神対巨人 1回裏阪神2死一、二塁、岡田監督(左)は佐藤輝の右適時二塁打で生還した二塁走者近本を出迎える(撮影・加藤哉)
阪神対巨人 1回裏阪神2死一、二塁、岡田監督(左)は佐藤輝の右適時二塁打で生還した二塁走者近本を出迎える(撮影・加藤哉)
阪神対巨人 1回裏阪神無死、近本は中前打を放つ。投手は菅野(撮影・加藤哉)
阪神対巨人 1回裏阪神無死、近本は中前打を放つ。投手は菅野(撮影・加藤哉)
阪神対巨人 1回裏阪神無死、中前打を放った近本(中央)(撮影・江口和貴)
阪神対巨人 1回裏阪神無死、中前打を放った近本(中央)(撮影・江口和貴)