この日もスタメンマスクは坂本誠志郎だった。13日ヤクルト戦(京セラドーム大阪)で梅野隆太郎が死球を受け、左尺骨を骨折。移動日を挟んで15日広島戦(マツダスタジアム)から5試合連続となった。

梅野との併用になっていた今季、一方が続けて試合出場したのは6試合連続が最長。開幕戦から6戦目まで梅野がかぶったものだ。20日DeNA戦(横浜)で坂本がスタメンなら6試合連続となり、これに並ぶ。というか伊藤将司が先発する20日もまず坂本に間違いないので並ぶのだ。

「正捕手は梅野」。指揮官・岡田彰布がそう言い切って迎えたシーズン。坂本は「キャプテン」でもなくなり、自身が考案した「虎メダル」も“廃止”になっている。岡田にすれば特にそんなつもりはないだろうが、坂本にとっては逆風状態だったかもしれない。どう思っていたのか。

「いやあ、そんなこと気にしてないって言うか。だって、どこの会社でも社長が代わったら方針が変わるなんて普通にあることじゃないですか。だからと言って自分のやることは変わらないし、その中で存在をアピールして、価値をつけていけば使ってもらえると思っていたし。そんなことを言い訳にしていたら成長もないと思います」

あくまで前向きな姿勢で併用を勝ち取り「捕手2人制」のいい感じになっていたところでの「梅野骨折」というアクシデントだ。結果として優勝が確実になるまで、ほぼ1人でマスクをかぶる状況になっている。正直、疲労はないのか。

「もう、ここまで来て、疲れとかそんなこと言ってられないですよ。目の前につかめそうなところまで来てるのに。行けるところまで行ってって感じですよ。開幕から梅野さんとやってきてこうなってしまったけれど栄枝(裕貴)や長坂(拳弥)の力を借りながらやっていきたいですね」

そしてこの試合、自身も4点目の適時打を放った坂本が「ヒーロー」と言ったのは7回に代打で犠打を決めた栄枝だった。「あんな全員がバントと思ってるところで出ていって。なかなか決められないですよ。自分も経験あるけど」

チーム、投手陣、そして後輩たちにもしっかり気を配りながら言葉を選んだ坂本。こういう捕手が“控え”として存在していたところに、優勝マジックの点灯している阪神の強さがあるのかもしれない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

DeNA対阪神 8回表阪神1死一、二塁、左前適時打を放つ坂本(撮影・河田真司)
DeNA対阪神 8回表阪神1死一、二塁、左前適時打を放つ坂本(撮影・河田真司)
DeNA対阪神 8回表阪神1死一、二塁、坂本は左前適時打を放つ(撮影・上田博志)
DeNA対阪神 8回表阪神1死一、二塁、坂本は左前適時打を放つ(撮影・上田博志)