優勝まで、もうそこまで来ている阪神と最下位に苦しむ中日の対決は、順位そのままで、なんだかおもしろくない気までしてしまうほど阪神の圧勝に終わった。その試合の序盤、目立たないが「ふうん」と思う場面があったのである。
2回表、阪神の攻撃が終わった後。一塁のコーチスボックスからベンチに戻る外野守備走塁コーチ・筒井壮と、2回3アウト目の打者になり、右翼の守備位置に向かうミエセスが何やら会話している。結構、長い時間だ。不思議に思い、筒井、そしてミエセスに聞いてみた。再現すればこんな感じだったという。
ミエセス コーチに言われたところに本当に打球が飛んでくるじゃないか! 驚きだよ。とても助かるよ。ありがとう!
筒井 それはよかった。これからもしっかりチェックしてやっていこう。
振り返れば、こういうことだ。敵失も絡んで阪神が3点を先制し、守りについた1回裏だ。先頭で2000安打を達成したばかりの大島洋平が放った当たりは右翼へのライナー。ミエセスはこれを慌てた様子でキャッチした。そして4番石川昂弥の大きな飛球も余裕を持って捕球している。
「大島はライナーで来るので前寄りを意識しておけ、ということです。まあ、あそこはポジショニングが良すぎて、あわててましたけどね」。筒井は笑いながら説明した。筒井は打者に応じて、きめ細かく指示を出すという。その的確さにミエセスが驚き、感謝したということだ。
圧勝したから気にならないが大事な試合だった。不動の「1番・中堅」の近本光司を死球禍で欠き、迎えた一戦。攻撃面はもちろん、守備でも要を欠くことになる。この日はそこにルーキー森下翔太を置き、左右を外国人選手で固めた。これでも問題ないけれど、万一「近本不在」で何かあればイヤなムードになっているところだ。
だからこそ筒井はいつも以上にミエセスにきっちりと指示を出したのかもしれない。「まあね。ミエセスはライトは慣れてますけどね。でも確かに近本がいないんでね…」。筒井はそんな話をした。
「彼はいつもいい情報をくれるんだ。信頼しているよ」。ミエセスもそう振り返った。まだ1試合だけだが、近本のいない不安は感じさせない。シーズン総仕上げに向けて、いい滑り出しだと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




