指揮官・岡田彰布は2試合で1点の打線におかんむりだった。詳しくは虎番記者の記事で読んでいただくとして「何も言わんようになったら好き放題打っとるな」などという発言から想像して、サイン、指示がなくなりフリーになったら得点できなくなったことに立腹しているようだ。
延長12回引き分けに終わった24日試合後にはめずらしいコメントも発していた。「情けないのう。何の覇気もないな」。10勝の可能性がわずかながらある才木浩人が延長10回まで好投したのに援護できなかった打線を責めたものである。
今年のキャンプ・イン前にこのコラムで書いたけれど岡田は精神的なことを好まない。「精神論なんか言うてもしゃあない」と言い切る。いわゆる「昭和の野球人」としては異例のタイプかもしれない。
そんな岡田から「覇気がない」というセリフが出たのは興味深いと思っていたが、この日の発言で精神論というより打席での考え、工夫を見せない選手たちが気に入らなかったのか、と勝手に理解する。
とはいえ、だ。1番・近本光司を休ませ、中野拓夢に最多安打を狙わせる「個人記録スタイル野球」になっているだけに、そこはなかなか難しいところかもしれない。26日からの甲子園でもう1度、締め直す可能性はあると思う。
近本不在が勝てなかった理由の1つと書いたが今季、規定打席に到達した打者の中でこのバンテリンドームでもっとも打ったのはその近本だ。打率3割5分3厘。そこに佐藤輝明が3割1分8厘と続く。
次に真剣勝負となるCSの舞台は、もちろん、甲子園である。バンテリンでなく甲子園でもっとも打っているのは誰か。答えはこれも近本だ。2割9分7厘は立派である。
だが規制打席到達者以外を見れば甲子園で「4割1分7厘」と驚異的に打っている選手がいる。この中日戦2試合で「1番・中堅」でスタメン出場した小野寺暖だ。17試合で24打数10安打と数字は少ないが、今季通算の3割5分3厘からしても相当な数字だろう。岡田も分かっているはずだし、だからこそここで起用したと思う。それに応え、いずれも安打を放った。
近本が戻れば中堅のスタメンはないがノイジーに代わって左翼はあり得る。シーズン甲子園ラストの2試合、小野寺に注目しておきたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)