CSについて、いろいろな意見があるのは野球ファンなら誰でも同じことだろう。かつてはセ、パ・リーグの優勝球団同士がぶつかるシンプルな形だったが、パで実施していた前後期制、プレーオフなどの時代があって07年からはセと合わせて現在のCS制になっているのは周知の通りだ。

優勝チームが日本一決定戦に出られないケースが起こるなど“弊害”の一方、消化試合が減り、プロ野球をより長く楽しめるというプラス面もある。その是非を今ここで話しても、あまり意味はない気はする。

個人的な考えを言わせてもらえるならばCS、短期決戦の持つ別の意味、別の興味というか、そういうものについてかもしれない。それは、シーズン中にあまり日が当たらなかった選手が活躍する場を増やすこともできるという点だ。

野球はレギュラーだけでやるものではない。だが、どうしても注目されるのはその面々だろう。広島とのCSファイナルを前にした17日、甲子園で行われた阪神のナイター練習。九里亜蓮に強い森下翔太、近本光司、中野拓夢の1、2番コンビ、さらに佐藤輝明といったレギュラーたちが虎番記者に囲まれていた。

そことは別にミエセスとともに引き揚げてきた糸原健斗に話を聞いてみようと思った。話を聞くといっても、そんなに取材時間はないけれどそれでも、いま、糸原はどう思っているのかに興味があった。

昨季まで二塁のレギュラーだったが指揮官が岡田彰布に代わり、今季は代打要員としてベンチにいることがほとんどだった。だが代打という仕事は、ある意味、短期決戦でこそ大きな位置を占める。特にDH制のないセ・リーグだ。

敵将・新井貴浩率いる広島はスタメンのクリーンアップにでも代打を出すスタイルだが岡田阪神ではそれはない。試合を決める大事な場面で下位打線に出てくるのが代打だ。阪神でいえば、それは原口文仁であり、そして糸原だ。反対に言えば、これほど存在感を見せる好機もない。「存在感を見せるチャンスやね? CSは?」。その問いかけに糸原は何と言ったか。

「当たり前じゃないですか-」。そうつぶやき、ニヤリ笑った。ナインの中ではベテラン、そして経験豊富な勝負師だ。糸原ら控えの仕事が勝負を左右する場面はくるか。そんな点にも注目したいCSだ。(敬称略)