神宮で9回表に佐藤輝明が最後の打席に入っているころ、マツダスタジアムで巨人が優勝を決めた。球団初のリーグ連覇への夢がついえた瞬間だ。ここに至るまでポイントは多くあったろうが、やはり23日の敗戦は大きかったと思う。

「あそこのゲームやな。今年を象徴しているような。そういう負け方やったもんな」。V逸が決まったこの日、指揮官・岡田彰布もそう振り返った敗戦だ。巨人と最後の直接対決となったその試合は0-1。それ以前に厳しい状況にはなっていたが9月に入り、猛烈に追い上げただけにもったいない黒星だった。試合後、岡田は取材拒否。思いを口にしなかった。いろいろな意味で考えさせられた敗戦だったからだろう。

さらに27日広島戦(マツダスタジアム)で延長12回サヨナラ負け。これが9月初の連敗だった。さらに、この日、神宮でヤクルトに完敗したのである。前日の敗戦で巨人の優勝マジックは「1」となっていた。そしてこの日、神宮の試合中から広島で巨人は優勢に試合を進めていた。それが分かっていたかどうか。阪神打線は中盤から糸が切れたような印象ですらあった。

前後するが岡田が虎番キャップたちに口を開いたのは23日の敗戦から丸1日空けた25日。ここで今季もっとも長い時間、自説を口にした。日刊スポーツでも触れたが、無死二塁で浅い中飛を打ち上げた佐藤輝の打撃を引き合いに出し(と言っても名前は出していないが)「技術じゃないやん。打ち方じゃないやん。状況の打撃や。それだけや」などとコメント。状況に応じたチーム打撃、野球勘の重要性といったものを説いたのである。

なぜか。いまのチームにそれがもっとも重要だと思っているからだ。投手陣は充実。打撃の面々もいい。足りないのは繊細さ、思考力、あるいは想像力といったものではないか、と感じているからだ。だから厳しい。期待の裏返しだ。それが備われば、黄金時代が来ると思っている。

「失敗からしか学べない」と言ったのは広島3連覇監督の緒方孝市(日刊スポーツ評論家)だが、学んで実践する機会は残っている。まずは2位確保だ。CSを甲子園で行うのはプロとして重要だ。DeNAとは残り3試合だが29日に勝てば2位は決まる。しびれるゲームになるはずだし、選手たちは成長した姿を見せ、岡田をうならせてほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 神宮球場での最終戦を終えスタンドへあいさつへ向かう岡田監督(右)ら阪神ナイン(撮影・横山健太)
ヤクルト対阪神 神宮球場での最終戦を終えスタンドへあいさつへ向かう岡田監督(右)ら阪神ナイン(撮影・横山健太)