「そんなに甘くないっスよ」。熊谷敬宥がニヤリとしたのは交流戦初戦の3日、日本ハム戦(エスコンフィールド)に勝った後だ。DH制のある試合で「熊谷スタメンはどうだ」と交流戦直前に書いた。自信はあったのだが当日、三塁にヘルナンデスが入り、指名打者は豊田寛だった。
そのゲームに勝った後。熊谷に「スタメンちゃうかったな」と声をかけたのである。彼がこのコラムを読んでいたかどうかは知らないけれど、それに対する答えが冒頭のものだ。
だが5日の日本ハム3戦目に「7番・三塁」で彼のスタメンが実現。安打も放った。そして、この日。指揮官・藤川球児は「7番・遊撃」で熊谷を今季2度目のスタメン起用したのである。6番は三塁ヘルナンデスだった。
「遊撃で熊谷か」と思うと同時に「木浪(聖也)は? 小幡(竜平)は?」と思った虎党も少なくないだろう。前日「8番・三塁」の木浪は延長10回にサヨナラ打を放っている。故障から戻った小幡も遊撃の守備でいい動きを見せていた。
その2人の名前がスタメンにない。好投手・宮城大弥を前にした大胆なオーダーだが正直、驚いた。しかし、その熊谷は最少1点リードの7回、1死からセーフティー・バント。そこから近本光司の記念打となるダメ押し適時打につなげたのである。
先発・大竹耕太郎の見切りも早い。4回、紅林弘太郎に2ランを浴びていたとはいえ、6回途中、75球で交代させた。1死一塁でその紅林を迎えた場面で岡留英貴を投入。岡留はここを抑えて、その裏、森下翔太の逆転弾が出た。
これが今季57試合目の阪神、オーダーはちょうど30通り目だ。日本一になった23年は前監督・岡田彰布(現オーナー付顧問)の下、69通りのスタメンだったが今季はすでに30通り。守備位置も含めれば、もっと多くの数字になるだろう。
オリックスは54試合で53通り目のオーダーらしいので、そちらが「猫の目打線」の程度は猛烈なのだが、とにかく指揮官は懸命に考え、最善の策を取っているということだ。それで負ければ批判も出るかもしれないが勝てば文句はないはず。熊谷を始め、これまで注目されなかった選手も起用しての首位快走だ。「出ている選手たちがよくやっているということ」と、指揮官。「球児マジック」の雰囲気が出てきた。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




